日本におけるAccruals Ratioの特徴

◆Accruals Ratioの計算

BeneishのMScoreモデルのインプリケーションから、日本における企業による利益調整と企業倒産の関係について調査してみたい。

具体的には、会計発生高(「当期利益(特別損益は含まない)-営業活動によるキャッシュフロー」)が大きい場合に不正会計の検出可能性が高まるとするMScoreモデルの特性を生かし、企業の営業活動だけではなくAQI(固定資産(償却あり)の変化)やDEPI(減価償却費の変化)のような投資活動に関連した利益調整も含めた財務指標(Accruals Ratio)を用いて分析を試みる。

Accruals Ratioについては様々な定義が存在しているが、本レポートでは次の2種類の比率をAccruals Ratioと定義してみたい(*4)。

一つ目は、財務活動を除く営業活動と投資活動に関する利益調整に関する財務指標として、下記のようにNOA(純営業資産:NetOperatingAssets)を計算し、その増加率をAccruals Ratioとすることで、どの程度利益が増加する方向に調整されたのかを説明する(B/SBasedAccruals Ratio)。

このようにNOAを用いて数値の異常な変化を捉えることで、売上債権を活用した架空売買、固定資産等の購入による費用の資産化の影響等だけではなく、倒産企業においてよく見られる資産売却や減損によるリストラクチャリングの影響も考慮することが可能となる。

二つ目として、会計発生高に投資活動によるキャッシュフローを含めた直接的な数値がNOAに対してどの程度変化していたかについても分析対象とする(CFBasedAccruals Ratio)。

営業活動によるキャッシュフロー算定における間接法によるインプリケーションから、特別損益の影響を除けば、B/SBasedAccruals RatioとCFBasedAccruals Ratioはほぼ近しい数値になるものと考えられる。

信用リスク分析 図1

(1)B/S Based Accruals Ratio
B/S Based Accruals Ratio(t)=[NOA(t)-NOA(t-1)]/[(NOA(t)+NOA(t-1))/2]

ここで、

NOA(t)=([総資産](t)-[現金及び現金同等物](t)-[短期投資](t))
-([負債総額](t)-[短期借入金](t)-[長期借入金](t))

(2)CF Based Accruals Ratio
CF Based Accruals Ratio(t)=[NI(t)-CFO(t)-CFI(t)]/[(NOA(t)+NOA(t-1))/2]

ここで

NI(t):当期利益(特別損益は含まない)
CFO(t):営業活動によるキャッシュフロー
CFI(t):投資活動によるキャッシュフロー