(写真=PIXTA)
各国中央銀行が金融緩和の姿勢を強めており、世界中で「利下げ」が相次いでいる。背景にあるのは、資源国を中心に、原油安で景気が悪化したことや、エネルギー価格の下落で、世界的にインフレが落ち着いていることなどだ。中国経済の減速傾向が強まり、世界経済がますます不透明感を強めるなか、各国中央銀行はさらなる「利下げ」に向かう可能性もある。現在進行中の「世界利下げ競争」の行方を、我々は決して軽視すべきではない。
利下げをするとどうなるか
中央銀行は景気が悪化した際、金利水準を引き下げる金融政策である利下げを実施する。利下げを行うと、市場金利が下落し、企業や個人がお金を借りやすくなるとともに、設備投資や個人消費が刺激されることで、景気の回復が期待される。
ただし利下げが限界に達して、実質ゼロ金利になった場合には、その効果が期待できなくなり、量的緩和やマイナス金利などの「非伝統的」な金融政策に踏み込むこともある。
世界中で利下げのオンパレード
先進国、新興国問わず、世界中で「利下げ」が相次いでいる。インド準備銀行(中央銀行)は9月29日、金融政策決定会合を開き、政策金利(レポ金利)を7.25%から6.75%に引き下げた。インドの利下げは今年4回目だが、ラジャン総裁は利下げ幅が大きくなった背景について、「世界経済は下り坂をたどっている」と述べ、自国の設備稼働率の低さを指摘。企業投資の回復の鈍さを訴えた。
またノルウェー中央銀行も9月24日、景気低迷と原油安を背景に、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の0.75%としたことも注目すべきだろう。豪州準備銀行のロウ副総裁も、「必要なら利下げ余地があるが、一段の利下げによる景気刺激効果はこれまでに比べて弱い」との見解を示すなど、利下げに動く可能性を示唆している。
台湾中銀も9月24日の定例理事会で、政策金利を現在の1.875%から1.75%へ0.125ポイント引き下げることを決めた。利下げは2009年2月以来、6年7か月ぶりとなる。ニュージーランドも今年になって3回利下げを行っており、9月に0.25%下げて、2.75%にしたばかりだが、世界的な景気低迷を背景に、さらに「利下げ」を行う用意があることを明らかにしており、ウィーラー総裁も、「経済情勢次第で政策金利をさらに下げる必要がある」と述べ、追加利下げの可能性を示唆している。