(写真=PIXTA)
賃貸マンションに長く住んでいれば、畳やフローリングは日に焼けて色落ちする。あるいは、タバコのヤニでクロスが変色する等、入居前と解約時は変化が生じるだろう。では、これらは全て入居者が元に戻す必要があるのであろうか。
賃貸借契約書の中には通常、原状回復規定というのが定められている。大辞林では原状とは「変化する前のもとのままの状態・形」と解説されている。
例えば、細かい話であるが画鋲の穴までも直さないといけないのであろうか。そこでこんな疑問に答えつつ、原状回復に関して基本的な知識を確認していく。
日常で使っている「原状回復」とはニュアンスが異なる
まず、原状回復の定義を確認しよう。
国土交通省において、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というのが策定されている。そこには原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・既存を復旧すること」と定義されている。
つまり、大辞林の定めているような元のままの原状とは少しニュアンスが異なる。原状回復という日本語が全く元の状態に戻すようなイメージを与えてしまうため、原状回復をめぐってはトラブルが多い。そこで国土交通省はこのようなガイドラインを定め、何が賃借人の負担すべき原状回復なのかを細かく規定している。
画鋲の穴は直す必要はない!「通常損耗」と「経年劣化」
ガイドラインの中では通常の使い方をして変化したものは「経年変化」か「通常損耗」としており、それについては賃借人が修繕する義務は負わないとしている。
例えば、上述の壁に空いた画鋲やピンなどの穴は通常損耗とされ賃借人は直す必要は無い。また賃借人が所有するエアコン設置による壁のビス穴は、結構大きい気もするが、通常損耗に分類され、これも賃借人は修繕義務を負わない。
それではテレビの設置はどうかという疑問も生じるが、テレビについては規定がない。しかしながらテレビなどは一般的な生活をする上で必需品になってきており、その設置によって生じたビス穴は通常損耗であると解釈されている。但し重量物設置のために空けた壁の釘穴やネジ穴は賃借人の原状回復負担となるため、全て対象外になる訳ではない。