米国の金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)が2015年10月27、28両日開催され、金融政策については現状維持とした。年間に8回、約6週間ごとのペースで開催されるFOMCも今年は12月15、16日の日程分を残すのみとなった。世界が注目する米国の利上げはまさに、このFOMCが議論の場となり、会合後に即日公表される声明文では、米国経済の現状や将来の見通しが語られ、市場関係者からも注目を集める。今回は、このFOMCの金融政策の決定プロセスに着目してみる。


FOMC委員長はFRB議長

FOMCの委員長は米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が務める。FRBは中央銀行に相当する組織だが、米国は地域主権が強く、中央集権体制における中央銀行のような機関を設立することが制度として馴染まないため、連邦準備制度という形態だ。この制度では、全米の12の連邦準備銀行(地区連銀)がFRBの管理下で中央銀行の業務を行う。

FRBは議長・副議長ポストを含め7人の理事で構成されるが、現在は2つのポストが空席のため理事は5人だ。FRBが他国の中央銀行と異なるのは、連邦準備制度という形態をとっているだけではなく、その金融政策の理念にも表れている。FRBは2つの使命(デュアル・マンデート)を掲げ、1つは各国の中央銀行と同様に「物価の安定」を目的としている。もう一方は、「雇用の最大化」を目標としている。

雇用に対する使命を明記する中央銀行はめずらしく、FRBの特徴ともいえる。それゆえに、毎月発表される雇用統計は、FRBにとっても最も関心を払うデーターの1つで、先行きの金融政策を占う上でも、欠かせない情報で、市場でも大きな注目を集める。


FOMCは金融政策決定会合

連邦準備制度を採用している米国では、金融政策決定会合はFRBだけではなく、連邦準備銀行の総裁も政策決定プロセスに関わる。その舞台となるのがFOMCで、FRB理事7人(現在は5人)と連邦準備銀行の総裁5人がメンバー。5人の総裁のうち、ニューヨーク連銀総裁はFOMCの副議長となる常任ポストで、残る4人は各連邦準備銀行総裁が持ち回りでメンバーを務める。この会合では、公開市場操作の方針や、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)レートの誘導目標と公定歩合を決定する。

FOMCの定期会合ではまず、12の米国内地域経済の景気報告などに基づき金融政策の議論を深める。地区連銀景況報告は、管轄内の個人消費や製造業のサービス状況、物価、賃金などをまとめたもので、ベージュブックと呼ばれる。これは、地区連銀景況報告の表紙がベージュ色であるからだ。

FOMCのうち、3、6、9、12月に開催される会については、終了後、FRB議長が記者会見を行い、金融政策や足下の経済状況についての分析を公の場で説明する。