ロイター通信によると、エコノミストが予想する12月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ確率は中央値で66~70%に達し、前回10月時点での55%から急上昇。相変わらず弱い物価上昇率にもかかわらず、米金融当局者の地ならし発言も相次ぎ、12月の米利上げはほぼ確実だと多くの市場関係者は見ている。では、このタイミングを織り込んだ上で、何に注目すべきか。
利上げのペースが速まる可能性
マーケットが最も注視するのは恐らく、利上げペースと毎回の利上げ幅であろう。ペース予測の正確さが、投資戦略を立てる上で不可欠だからだ。現在のところ、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、「FOMCの予想では、利上げのペースが大変ゆっくりしたものになる」と繰り返し強調している。市場では、これを「3か月ごとに0.25%利上げする」ことを意味していると受け止める参加者が多い。
イエレン議長、フィッシャー副議長に次いでFRB高官ナンバー3のダドリー・ニューヨーク地区連銀総裁も、「ペースは非常にゆっくりしたものになる」との見解を表明している。
だが、タカ派のラッカー・リッチモンド地区連銀総裁は11月12日の講演で、「市場関係者は、『利上げペースはゆっくりとしたものになる』と予想しているが、それはあくまでも予想に過ぎない。利上げペースに関して、FOMCの気は変わるかもしれない」と、"びっくりぽん"発言をした。
ラッカー総裁と講演に同席した、同じくタカ派のセントルイス地区連銀のブラード総裁も、「失業率が4%台まで低下すれば、FOMCは利上げペースを速めなければならないかも知れない」と同意した。ブラード総裁は11月6日に、「2度目の利上げを実施して初めて、『緩やか』の言葉が意味することが明らかになる」とも述べており、イエレン・フィッシャー・ダドリー各氏のFRB主流派とは、発言のトーンが違ってきた。
筆者は2月にブラード総裁に直接会ってインタビューしたが、その際には主流派と歩調を合わせ、「04年から06年にかけて毎回のFOMCで0.25%ずつ機械的に利上げして失敗したケースとは違い、今回のペースはかなりゆっくりになる」と話していた。「利上げペースが速まる可能性がある」との最新発言は、当時と明らかに違っている。
もっとも、取材時に、「利上げのタイミングが遅れれば、初回の利上げ幅が0.25%ではなく、0.5%になる可能性もあるので、早期の利上げ開始が望ましい」とも述べていたため、今回の発言は12月の開始では遅すぎるという意味かも知れない。いずれにせよ、2016年にFOMC の投票権を持つメンバーに復帰する、「市場を動かす男」ブラード総裁の発言は、市場にとって重い。
こうしたタカ派FRB高官の発言は、景気循環説に基づく米経済の順調な成長持続を前提にしている。そうした見方を補強するのが、ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏が唱える強気の経済回復持続説だ。「過去のパターンから見ると、米利上げ後も4年ほどは景気拡大が続く」と、ハチウス氏は見ている。