昨年からのアベノミクス、2020年に開催が決まった東京オリンピック・パラリンピックと株式投資の材料に事欠きません。今回ではもう少し近い時期に注目されそうなテーマである「マイナンバー法」を取り上げてみました。
先日の日経新聞で下記のような記事がありました。銀行口座にまで紐付けられることで富裕層の隠し口座発掘に繋がるなど、大きな影響があると見られています。
政府の税制調査会(安倍晋三首相の諮問機関)は8日、2016年に運用を始める社会保障と税の共通番号(マイナンバー)を銀行の預金口座に結び付ける方針で一致した。個人の資産をより正確に把握できるようにすることで、公平に税や社会保険料を負担する仕組みを目指す。マイナンバーの医療や民間分野での活用も検討していく。
出展:
『預金口座にマイナンバー連結 政府税調方針、資産を把握 』 日本経済新聞 電子版
それでは、マイナンバーから何が起こるかについて具体的に見て行きたいと思います。
マイナンバー法とは
マイナンバー法とは、正式名称を「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」と言い、日本に住んでいる住民や法人などに対して、固有の番号を付番し、行政手続きにおいてこのマイナンバーを利用するために整備された法律です。住民には個人番号(12桁)と呼ばれる番号が付番され、法人や税関系の届け出を行う社団や財団には法人番号(13桁)が付番されます。平成25年5月24日に成立し、同年5月31日に公布されています。
今後の予定としましては2015年秋頃から市区町村よりマイナンバーが記載された「通知カード」が郵送されることになっており、希望者には氏名、住所、顔写真などを記載したICチップ入りの「個人番号カード」が配布されます。また、法人においては国税庁が法人番号を発行することになっています。そして、2016年1月より実際の運用が始まります。運用開始後は出生した時に個人番号が発行されることになります。
もともと納税者番号制度として検討が進められてきましたが、話し合いが進められる中で納税と社会保障給付の双方に利用できる番号制度となっていきました。
マイナンバーで世の中はどうなるのか
2013年11月23日現在、行政機関は国民の個人情報をばらばらに管理している状況です。確定申告をする際には税務署が発行した番号が付与され、社会保険の手続きをした際には、基礎年金番号や健康保険証の番号など年金事務所が発行した番号が付与されます。これらの番号を覚えているはずもなく、その都度、問い合わせをしたり、年金手帳を探したり、健康保険証を確認したりする必要があります。
マイナンバー制度では、このようなばらばらに管理している状況を打開するべく、税務や年金、そして医療や介護などの情報を結び付け、所得状況や社会保障の需給実態を正確に把握できるようになることが期待されています。今まで各行政機関だった管理が一元化されることによって、行政機関が国民の情報を横断的に管理できるようになり、税の過少申告や社会保障の不正受給を防ぐことが可能となってきます。
また、当初は、マイナンバーの民間利用は禁止されていますが、ゆくゆくは解放される可能性もあります。固定資産や銀行口座にひも付するべき、という議論もすでに起こっています。
マイナンバーのメリット・デメリット
マイナンバーは行政が国民の所得状況や社会保障の需給実態を正確に把握するための制度でありますが、国民にとってもメリットがあります。もっとも身近に感じるメリットとしては番号が一元化されることにより、行政手続きが簡便化するということです。年金受給の手続きや確定申告において住民票や納税証明書が不要となることが期待されています。また、脱税や過少申告、また社会保障の不正受給を防ぐことが可能となるため、社会全体としてみれば、税収の増加、社会保障費の圧縮という形で、国民負担が軽減される可能性もあるわけです。
一方、デメリットも懸念されています。もっともイメージしやすいデメリットは個人情報漏えいです。行政機関が管理をしていると言っても、絶対に情報が漏れないという確証はありません。また、不正取得による悪用も考えられます。これらの懸念に対して、政府では第三者委員会を設置し、情報の漏えいに関わった職員には4年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す、等の罰則を設けています。