北欧FinTech事情
(写真=PIXTA)

1661年に欧州で初めて紙幣を導入したスウェーデンは、世界有数のキャッシュレス先進国へと進化し、「FinTech」(金融×IT)のテストベッドとしての役割を担いつつある。


マイナンバー先進国スウェーデンの強み

スウェーデンは、マイナンバー先進国として知られており、1947年には本格的な国民共通番号制度が導入された。国税庁が、全国民に対し、出生時点で10桁の個人識別番号を付番する仕組みになっている。

金融分野では、国内銀行から構成されるコンソーシアムが、電子証明書(認証用・署名用)、氏名および個人識別番号が格納されたeIDカード(Bank ID)を発行しており、一般行政サービス(電子納税申告、行政手続など)や民間サービス(インターネットバンキング、eコマースなど)で幅広く活用されている。

またスウェーデンは1766年に個人情報保護法が制定されるなど、プライバシー保護の歴史も古い。個人識別番号管理については、1973年に創設されたデータ検査委員会(The Data Inspection Board)が所管している。昨今、世界各国で問題となっているサイバーセキュリティ対策については、国防省傘下の民間危機管理庁(MSB)が所管している。

このように、マイナンバー制度と連携した金融IT化政策と強固なプライバシー/セキュリティ対策、そしてITリテラシーの高い国民性が、スウェーデンにおけるキャッシュレス社会拡大の原動力となっている。


キャッシュレスな社会基盤を活用するスウェーデン型FinTechモデル

スウェーデン政府は、キャッシュレスを基本とする先進的な金融IT基盤と、ITリテラシーの高い国民文化を活用した新規事業創出策として、FinTechスタートアップ企業に対する支援を積極的に行っている。

その中核的役割を果たしているのが、北欧最大の金融センター・ストックホルムだ。2014年の欧州におけるFinTechへの投資額規模をみると、ロンドン(5億3900万米ドル)、アムステルダム(3億600万米ドル)に次ぐ第3位(2億6600万米ドル)の位置を占めている。

ストックホルム商科大学が2015年6月に公表したレポートによると、ストックホルム地域の主要なFinTechスタートアップ企業は次の通りである。

決済: Accumulate、Allopass、Babs Paylink、Betalo、Billhop、iZettle、Klarna、Mondido、MPS (Mobile Payment Solutions)、PayAir、Payex、Payground、Payson、Prello、Qliro AB、Seamless Payments、Trustly、Vaulted Payments、WyWallet

金融取引・銀行: Aphelion、Camerontec、Cinnober, CMA Small Systems、Neonet、Nordnet、OMX Technology、Shareville (Nordnetの一部門)、SunGard Front Arena

資産管理: Avanza、InsPlanet、Qapital、Tink

暗号通貨: Bitjoin、ChromaWay、Cryex,KnCMiner、Safello

先進的貸付: Consector、Crowdculture、Emric AB、FundedByMe、Kortio、Lanbyte.se、Lendify、Lendo AB、Myloan (Insplanetが保有)、Qvido、Toborrow、Trustbuddy
送金:Seamless Distribution、Swish (GetSwish AB)

その他のFinTech: Algorithmica、BehavioSec、Bimamobile (Milvik AB)、Bolanegruppen (Our Interest AB)、Mopper、ORC Group/Orc Software、Pantor、Tbricks、TriOptima、Zenconomy、Trema

以下ではスウェーデンのFinTechのうち、2014年の資金調達額規模上位3社を紹介する。