テキサス州オースティン
(写真=PIXTA)

スタートアップの登竜門と目される米国最大級のビジネスイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で有名になった米国テキサス州オースティン。シリコンバレーに対抗する地域創生の基盤が「スマートグリッド」だ。


全米が注目するオースティン発のピーカンストリート

ライブミュージックの聖地として知られるテキサスの州都オースティンは、人口約84万人。コンピューターやその周辺機器、ソフトウエア関連分野の発達が目覚ましく、「シリコン・ヒル」とも呼ばれている。また、スマートメーター、ソーラーパネル、電気自動車(EV)、スマートビルディングなどを使ったスマートグリッドの実証実験でも知られている。

2009年米国復興・再投資法(ARRA)に基づく景気刺激策の一環として始まったスマートグリッド推進策の一環として、米エネルギー省(DOE)のプログラムに採択されたのが、オースティン市の中心地から数kmの距離にある空港跡地を対象地域とする「ピーカンストリート・スマートグリッド実証プロジェクト」だ。

実証実験の対象は一般住宅1000戸と小規模商業施設25カ所、公立学校3校で、運営主体は、オースティン市、テキサス大学オースティン校および民間企業(デル、インテル、LG、ソニーなど)の産官学連携をコーディネートする非営利組織「Pecan Street Inc.」である。

2010年~2015年の間実施された実験のポイントは、電力、ガス、水道を包括的に管理する「Energy Internet」の構築と、地域コミュニティ「Mueller」の住民による積極的な参加だ。


スマートグリッドとビッグデータの融合で電力使用量を38%削減

すべての住宅にスマートメーターおよび高度メーターインフラストラクチャー(AMI)を設置し、生成されるエネルギーデータを集約・蓄積して、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)でエネルギー使用状況を把握し、高度分析ツールで需要を予測・可視化する仕組みが導入された。スマートメーターは、太陽光発電システムや電気自動車(EV)および蓄電機能と統合されており、余剰電力の売買も可能である。

実証実験の結果、低炭素で効率的な電気利用が実現された。エアコン機能に関しては、オースティン市内の一般的な既設住宅と比較して、38%電力使用量を削減することができた。

現在、ピーカンストリート・プロジェクトは、オースティンから米国内17州、住民1300人の規模まで拡大し、2000以上のセンサー/モニタリング機器から生成されるビッグデータを日々収集・分析している。