アベノミクスを起因とした株高やNISAなど資産運用や資産管理について真剣に考える人口は以前と比べて確実に増えたといえるでしょう。その中で、必ず「分散投資」という言葉、その分散投資の意義や本質的な価値について考えてみたいと思います。
長年、日本人は資産の大半を自国通貨である「円」建てで保有してきました。アベノミクスによって15年以上に及ぶデフレからようやく脱却の兆しが見え、景気回復への見通しが広がる今、日本株など円建て資産の上昇に期待を寄せる人は少ないのが現状です。ただ、安倍晋三政権が目指す2%インフレが実現すれば、円安を伴う形で実質的に円建て資産が目減りすることにもなります。新興国の成長余力も依然として高い中で、資産管理の観点から資産防衛として外貨の持たざるリスクを意識する必要性が増しています。
外貨の持たざるリスク
日銀の資金循環統計によると、今年6月末の家計の外貨建て金融資産(預金、投資信託、対外証券投資)の総額は36・6兆円で、家計の金融資産総額(約1,590兆円)に占める外貨建て資産の比率は2.3%にすぎないようです。また、家計の金融資産のうち54%は現金・預金で、米国(14%)やユーロ圏(36%)に比べても高い比率を占めています。これらは金融資産であって、不動産などの実物資産は含んでいないため、日本の家計資産全体に占める外貨建て資産の比率は更に低くなると考えられます。
ただ、古くから「タマゴを一つのカゴに盛るな」と言われるように、資産の多くを特定の商品に集中させることは高いリスクを伴います。また、ポートフォリオ(資産構成)理論からも、複数の資産への分散はリスクを抑制して資金を効率的に運用できることが知られています。ハイリスク・ハイリターンの商品と、ローリスク・ローリターンの商品を組み合わせることで、長期的に収益の振幅を平準化しながら、ローリターンの商品よりも高い収益を見込めることが可能になります。