政府系ファンドや大学基金も実践

このような分散投資法は、ユダヤ人や華僑だけが実践しているものではありません。シンガポールやアラブ首長国連邦(UAE)などの世界最大規模の政府系ファンドも基本的な考え方は同じで、豊富な税収やオイルマネーによって蓄積された資産を株式や債券、不動産など世界の様々な資産に分散投資し、収益を生み出しています。安全運用が求められる日本の公的年金ですら、運用主体の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は資産の4分の1近くを外国株式・債券に振り向けています。

米エール大学の基金運用局では、1985~2005年の20年間平均で年率16.1%という驚異的な運用成績を達成していることで有名です。同大の最高財務責任者(CFO)、デイビッド・スウェンセン氏はその著書の中で「リターンの変動の約9割が資産配分に起因する」「投資家は資産配分目標を合理的に設定するのが先決なのに、役に立たない銘柄選択や(投資)タイミング(の時期を図る)のに夢中になっている」と指摘しています。資産をどのように配分して分散させるかは、 それほど重要なことなのです。


円安進行により資産価値が下落

気になるのはこのところの為替の動向です。ドル・円レートは11年10月、一時1㌦=75円32銭の戦後最高値を更新後も歴史的な円高水準が続いていましたが、安倍政権の発足によって2012年の秋以降、急速に円安が進行し、昨年より1㌦=100円〜105円で推移しています。円安は円建て資産の目減りを意味しますが、復活する米国景気は日米金利差の拡大を通じて円安要因となる可能性があります。また、安倍政権が目指す2%インフレの実現も、貨幣価値が下落することで円安につながってしまいます。

バブル崩壊後、20年以上を経て、日本は今なお世界3位の経済大国。当面は円建ての資産から安定した収益は期待できるが、将来は人口減少や膨大な財政赤字など懸念要因も抱える。 世界経済の転換期にある今、株式や債券、不動産などの形で資産を海外分散させる運用法は、収益の安定化だけでなく資産防衛にもつながることを意識したい。

Photo:Diversification - Investing by 401(K) 2013