顕微鏡

最近、連日報道されている万能細胞の一種「STAP細胞」は再生医療への応用が期待される画期的な細胞です。 日本だけでなく世界からも大きく注目されています。 それは株式市場も例外ではなく、関連銘柄がその動向とともに賑わいをみせています。

そこで今回は「STAP細胞」に焦点をあて考察してみました。


◎科学的発見における経済効果

世界では万能細胞の発見以外にもヒッグス粒子や次世代電池など科学的発見が相次いでいます。 こういった科学的発見は経済にどう影響するのでしょうか。

ヒッグス粒子を例にとりましょう。 発見の舞台となったのはスイスとフランスの国境です。 田園地帯だったこの場所に研究所が設立され、地下には全周27kmにも及ぶ円形加速器が設置。以来、人口は大きく増加し今では多くのオフィスや実験施設はもちろん、宿泊施設、トラベルセンター、銀行やレストランが立ち並んでいます。さらに研究所ではガイドツアーや体験学習なども催され、あわせて大きな経済効果をもたらしています。 さらなる超大型加速器「国際リニアコライダー」の建設を宮城県などが必死に誘致活動するのも頷けるでしょう。 これらの経済効果は年間数百億円とも言われています。

このように科学的発見が次へのステップを求める度に大きな経済活動となり、多方面に影響を与えることは枚挙にいとまがありません。 もちろん関連銘柄は噂やニュースの度に物色されることになります。


①STAP細胞とは

おさらいしましょう。 この「STAP細胞」が凄い理由は何でしょうか?

端的に言うと万能細胞がとても簡単に作れてしまうところです。 一つの細胞が様々な臓器や組織に変化する万能細胞は人で言えば受精卵以外には存在しません。しかし、これを人工的につくり臓器移植などに応用できれば再生医療として大きな進化をもたらす可能性があります。 京都大学の山中教授が発見した「iPS細胞」は患者から細胞を採取しそのまま臓器を作れるため、それまでの「ES細胞」における拒絶反応や倫理的問題をクリアした革命的と言える万能細胞でした。 さらに「STAP細胞」は「iPS細胞」における重要なプロセス(遺伝子を加える作業)なく万能細胞が作れるという全く違うアプローチでの発見。これもまた画期的でした。


②STAP細胞騒動の経緯

さて、その「STAP細胞」発見ですが、関連銘柄にどう影響したのでしょうか。 ご存知の通り、発見から現在まで大きな変容がありました。その経緯を追ってみましょう。

1月28日 小保方氏を中心としてSTAP細胞発見の記者会見
1月29日 科学誌ネイチャーの電子版に論文掲載、国内外で検証がはじまる
2月13日 不自然な画像があると指摘され理研が調査開始
2月17日 ネイチャーが調査開始と発表
3月10日 共同著者である若山教授が論文撤回を示唆
3月14日 理研が「重大な過誤」と中間報告し画像転用を認める
4月1日 理研が「小保方氏に不正行為があった」と調査の最終報告
4月8日 小保方氏が理研に不服申し立て
4月9日 小保方氏が「悪意のない間違い」と記者会見

発見の報道解禁となったのは日本時間1月29日の夜でした。そのため株式市場において大きく影響が出たのは1月30日からとなります。この1月30日から4月9日までの関連銘柄の値動きを追ってみます。