(写真=PIXTA)
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女性、高齢者の労働参加拡大による潜在成長率への影響

人口減少、少子高齢化が進展するもとで経済成長率を高めるためには、女性、高齢者の労働参加拡大が不可欠だ。

ニッセイ基礎研究所の中期経済見通し(2015年10月発表)では、今後10年間で、男性は60歳代の労働力率が現在よりも10ポイント程度上昇(60~64歳:77.6%→87.5%、65~69歳:52.5%→61.4%)、女性は25~54歳の労働力率が70%台から80%前後まで上昇することを想定している。

2014年時点の男女別・年齢階級別の労働力率が今後変わらないと仮定すると、労働力率が相対的に低い高齢者の割合が高まることにより全体の労働力率は低下し続け、2025年には56.5%と2014年の59.4%から3ポイント程度低下する。

また、15歳以上人口の減少ペースは今後加速するため、15歳以上人口に労働力率をかけあわせた労働力人口は2025年には6071万人となり、2014年よりも516万人も減少してしまう(年平均で▲0.7%の減少)。

一方、高齢者、女性の労働力率上昇を見込んだ中期経済見通しのケースでは2025年の労働力率は59.1%となり、現在とほぼ変わらない。この場合でも15歳以上人口の減少に伴い2025年の労働力人口は6352万人と2014年よりも235万人減少する(年平均で▲0.3%の減少)が、現状維持ケースと比べれば減少幅、減少ペースは大きく緩和される[図表1]。

潜在GDPは中長期的には労働、資本の投入量、技術進歩率によって決まるため、労働力人口の動向は先行きの潜在成長率を大きく左右する。

現状維持ケースと女性、高齢者の労働参加拡大ケースの潜在成長率への影響を試算すると、労働投入量の差により年平均で0.3%ポイントの差が生じる。

中期経済見通しでは潜在成長率が足もとの0.5%程度から1%程度まで高まると想定しているが、女性、高齢者の労働参加が進まない現状維持ケースでは2025年の潜在成長率は0.7%程度にとどまる。

また、一人当たりGDPでみると、女性、高齢者の労働参加拡大ケースでは足もとの0.6%から2025年には1.6%まで伸びが高まるが、現状維持ケースでは1.4%にとどまる。この結果、2025年の潜在GDPの水準は17兆円、一人当たりGDPでは14万円の差が生じることになる[図表2]。

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