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(写真=PIXTA)

日銀のマイナス金利政策導入以降、大手銀行・地銀をはじめとする金融機関で、住宅ローン金利引下げの動きが相次いでいる。変動金利は年0.6%以下、10年固定金利で年0.7%台、35年固定でも年1.5%近くと、歴史的な低水準を維持更新中だ。当面は金利が上昇しにくいと見られ、借入額設定で無理をせず適正額を借り入れるなら、変動型でも固定型でも「借り時」には違いなさそうだ。

注文住宅なら9月末までに契約すれば増税の影響受けない

さらに借り時の気運を後押しするのが、2017年4月以降の消費増税だ。住宅購入時の消費税額は、完成後引き渡し時点の税率が適用される。ただし契約から引き渡しまで長期間を有する場合もあるため、「経過措置の適用」が認められている。これにより、請負契約による注文住宅は今年9月30日までに契約を締結すれば、税率引き上げ以降も税率8%が適用される。

住宅メーカーや工務店等の請負企業側では、さらなる機会となる。マイナス金利による影響(ローン金利引き下げ)と増税による影響(駆け込み需要)。現在のところ、請負企業側からWチャンスをストレートに謳う動きは見られないが、まずはローンや資金計画をテーマにするセミナー開催の強化が予想される。

大手中小の住宅メーカーや金融機関、住宅専門メディア主催のものまで、幅広く開催されているマネーセミナー。「超低金利の今がチャンス!」のうたい文句と共に、FPや金融機関担当者を招いての企画が増えつつある。

反動ダメージを事前補てんする売上を目指す?

「金利変動は水物」とは言え、請負企業側からすれば、今回のWチャンスで最大実績を上げたい理由は、過去のダメージ経験にもあると言える。前回増税時の反動を受けた2014年の新築住宅着工数は、前年度比10.8%減の880万470戸(2015年4月30日国交省発表)。経過措置適用の物件受け渡し期が終了して以降、大手住宅メーカーのゴージャスなエントランスや打ち合わせルームでも、閑古鳥が鳴いていた。

増税後も駆け込み反動によるマイナス実績予測は必至で、時期が終わる前にマイナスを補てんする売上目標が設定されるだろう。

とはいえ、新築物件を初めて持つ世帯(一次取得世帯)は30代が最も多く、少子高齢化影響で人口減少が始まっている世代である。パイが小さくなる中、各社の契約争奪戦は激しさを増すばかりだ。住宅金融支援機構調査結果でも、住宅ローンの利用者年齢は、2014年度上半期には0.6才若くなっている。

前回の反動直後に、ある地方工務店の経営者は「増税前の契約獲得に躍起になった結果、本来新築対象ではない若年世帯が前倒しで刈り取られてしまった」と言っていた。このまま増税を迎えれば、日本の新築需要はしぼみ、マーケットがさらに縮小するのではないだろうか。

住宅企画も二極化 大手は富裕層に注力

新築住宅の世界でも需要の二極化が始まっている。10年ほど前から増加を続け中小零細企業の参入も顕著なローコスト住宅企画に対して、2014年以降、大手住宅メーカーは富裕層向けの住宅企画の強化を始めている。

ローコスト住宅と言えば、芸能人をCMに起用したり野球場に派手な看板を掲げたりして知名度を上げ、全国展開に成功した某ハウスメーカーが有名である。ただし同社は数年前からローコストからの脱却を図るイメージ作りと商品構成に注力し、現在ではローコストイメージを払しょくしつつある。

大手メーカーの富裕層戦略も同様だが、ローコスト住宅の対象となる若年世代人口の減少と、同世代の平均年収の伸び悩みから、企業戦略の方向性をシフトしたものと推測される。また「子育て貧困世帯の増加」が問題視される中、次年度の増税前需要と現在の低金利需要による売り上げ増加は、前回増税時と同様の戦術では、見込めないだろう。子育て世代の平均請負契約額は、年収に比例して減少しているからだ。

新築の購入を検討しているなら、増税前や低金利チャンスを助長する風潮に流されず、それぞれの家庭に最も適切な購入タイミングと商品企画選びを行なうべきだろう。(ZUU online 編集部)

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