昨今、ビジネスの現場や個人のキャリア観を根本から書き換えてしまいかねない可能性が、社会的な議論のテーマになっている。「第3次ブーム」だといわれる人工知能(AI)だ。この最先端のITがビジネスや個人の仕事を根こそぎ押し流す。そんな未来像だ。

特に、クイズに答えたり、シンプルな問診だけを医師に代わって行う「特化型」のAIではなく、さまざまな仕事を自律的にこなし、AIによってAI自身の改善も進む水準の「汎用AI」が実現すれば、ほとんどの仕事を一掃してしまうとみられている。一部には、「人口の10%ほどしか職につけなくなる」と主張する論者もいるほどだ。そんな時代が、2045年には来る可能性があるとされているのだ。

AIによる(90%にものぼる!)大失業時代は、18世紀中葉から19世紀初頭の産業革命で生産の機械化が進展する際に語られた「技術的失業」の現代版といえるが、もしも労働が世界からなくなってしまった時には、人の働き方はどう変わるのだろうか。その未来像を推測する。

「月額8万円」がBIの支給額か?

ほとんどの仕事がなくなれば、もちろん労働はなくなる。しかし、問題なのは、労働がなくなるとすれば、イマ現在、ビジネスパーソンが日々の糧にしている「賃金・給料」もなくなるということだ。その代わりに大部分の人々の生活を支えるのがベーシックインカム(BI)と呼ばれる仕組みだとみられている。

BIとは、最低限の所得を保障する制的構想の一つで、政府が国民全員に最低限の生活を送るのに必要な現金を無条件で定期的に支給するもの。AIが人間から職を奪い去ってしまう可能性を指摘する際にひんぱんに論及される制度で、例えば「毎月8万円が一人ひとりに分配する」などと言及されることが多い。荒唐無稽なアイデアだとみられがちだが、フィンランドやスイスはBIの導入を取り上げており、現実性がないわけではない。

さて、BIとして月額8万円が支給される可能性があるとして、生活できるだろうか?「1カ月の収入が8万円なんて信じられない」という人が大部分の反応かもしれない。筆者自身もそうだ。ただ、AIが人からほとんどの仕事を奪い去るとすれば、「働きたくても、働けない」立場にほとんど誰もが立たされることになる。

そう断言されると「恐ろしい」かもしれないが、安心してもらいたい。AIによって全ての仕事が奪われるとみられているワケではなく、人間に残される仕事もある。大部分の人にとっては縁のない10%の仕事を除いて、90%の人々には「人間らしい仕事」が残される可能性が高いのだ。例えば駒澤大学で経済学の教鞭を執る井上智洋氏は、介護などホスピタリティを要求される仕事は残るのではないかと話す。

ただし、同氏は「介護などについては賃金が払われ、仕事が残るかもしれないが、それでも月額で8~10万円程度ではないか」と指摘。BIに加えて収入を得られるとしても、月収は20万円程度で、多く見積もっても年収は240万円という低水準だ。

AIが示す未来の「働き方」、フリーランスか?遊び人か?

そんなAIがほとんどの仕事をする時代に、ほかに働く道がないのかというと、そういうわけではない。介護などではなくても、いくつかの就労形態が存在すると、リクルートワークス研究所の清瀬氏が指摘する。

同氏によれば、汎用AI実用化時代には「クリエーター」「スペシャリスト」「テクノクラート」「フリーランス」といった働き方が残るという。その中でも最も多くの人に開かれているのがフリーランスで、一部には全ての人々が労働者ではなくなり、小規模の資本家になる「万人の資本家化」が起こるのではないかとみる見方もある。

言い換えれば、誰もが自営業者だったりSOHOのビジネスオーナーになり、事業を行うという未来像もあり得るとする見方だ。

特に、AIの弱点として、芸術、歴史、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される仕事や、他者との協調や理解、説得、交渉しなければならない仕事には向かないのだ。つまり、こうした仕事を巧く進めるための教養やスキルといった「文化資本」が求められる仕事については、人間が担っていく余地があり、そこで収入を得るチャンスをつかめるともいえる。

その点では、「フリーランス」の目線で、オルターナティブな働き方をしながら対価を得るというビジネスの構想を、汎用AIの「技術的失業」時代にも描き出せるのだ。

ココにもう一つ、オモシロイ可能性が残る。「遊び人」という職業で、元ライブドア社長やSNS株式会社のファンダーとして知られる堀江貴文氏の考え方だ。同氏によれば、「働かないと食べていけない」と考える労働者もまだまだ多いものの、実はそうでもないという。

さらに、堀江氏は「食料をタダでくばってもいいんですよ。今では、ロボットが富を作り出していますし」とした上で、タイ国内には、自動で機械が走り、無人でウェイクボードをやる場を提供するところがある。同氏は「一日中、人々がウェイクボードをして遊んでいます。これが近未来の風景だと思います」と自説を披露したこともあり、そんな未来をテクノロジーが実現してしまう可能性もゼロではない。(ZUU online 編集部)

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