住宅ローン金利
(写真=PIXTA)

住宅ローンを借入れる際に、返済期間で迷われる方は多いのではないだろうか。返済期間を長くすると毎月の返済額を減らせるメリットがある一方で、返済期間全体を通してみれば、借入れの期間が長い分利息がかさみ、総返済額が大きくなるデメリットもある。

低金利の昨今、住宅ローン金利の利率だけに目がいきがちだが、同じ金額を同じ金利で借りた場合でも、返済期間の長さによっては総返済額に大きな差が出てくる。そこで、住宅ローンを借入れする際に抑えておきたい返済計画の考え方と繰り上げ返済について解説していく。

住宅ローンの返済計画はどう考える

住宅ローンは、無理なく返済できる金額かどうかを考え計画を立てた上で借入れする必要がある。

物件を検討する際に、不動産業者が住宅ローンの返済シミュレーションを提示してくれることは多いが、完済までの長期間を低金利のままでシミュレーションしているケースをよく見かける。目先の返済額だけをチェックし、無理なく返済できる金額だと判断するのではなく、ライフプランを考えながら自分自身でも返済シミュレーションをおこない返済計画を立てていただきたい。

住宅ローンの返済シミュレーションは金融機関の窓口でできるのはもちろんのこと、各金融機関のホームページなどにある住宅ローンのシミュレーションサービスを利用すれば簡単に計算できる。「借入金額」「借入期間」「金利」などを入力すれば簡単に毎月の返済額、総返済額がわかるので、教育資金や老後資金の準備なども考慮し無理なく返済できる金額なのかを計算してほしい。

理想を言えば退職までに完済できるプランにしたい。しかし、退職までの期間に設定した場合、毎月の負担額が高くなる。そういった場合、はじめは長めに借りておき、繰り上げ返済を上手く活用することで返済期間を短縮する方法もある。では次に繰り上げ返済の種類、繰り上げ返済の効果、繰り上げ返済するタイミングについて解説していきたい。

繰り上げ返済の種類

繰り上げ返済とは毎月やボーナス時の通常のローン返済とは別にまとまった資金を入れて、返済をすることである。繰り上げ返済したお金は元金に充てられ、本来かかるはずだった利息が不要になる。つまり繰り上げ返済をすることで総返済額を大きく減らす効果がある。

繰り上げ返済には2つの方法がある。返済期間を短くする「期間短縮型」と返済期間を変えずに毎月の返済額を少なくする「返済額軽減型」がある。

2つの方法のうち、繰り上げ返済で利息の軽減効果が大きいのは「期間短縮型」である。しかし「返済額軽減型」は「期間短縮型」と比べて利息の軽減効果は劣るが、教育費の負担が大きく家計がまわらない時などは、毎月の返済額を減らすことで家計負担を軽くすることができる。

繰り上げ返済の効果 期間短縮型と返済額軽減型を比較

「期間短縮型」と「返済額軽減型」で繰り上げ返済した場合の軽減効果はどれくらい違いがあるのか以下の通り、設定した条件に基づき、繰り上げ返済シミュレーションをした。

【条件】
借入金額:3000万円
借入期間:30年
金利:30年固定金利1.6%
5年目に100万円を繰り上げ返済する

【期間短縮型】
繰り上げ返済しなかた場合、返済残期間25年、総返済額が3779万3160円
繰り上げ返済した場合、返済残期間が23年10ヵ月に短縮され、総返済額3731万7474円となり、総返済額は47万5686円軽減される。

【返済額軽減型】
繰り上げ返済しなかった場合の毎月の返済額は10万4981円、総返済額3779万3160円。繰り上げ返済した場合の毎月の返済額は10万935円、総返済額3757万9360円となり総返済額は21万3800円軽減される。シミュレーションからみてもわかる通り「期間短縮型」は「返済額軽減型」に比べ、総返済額を減らす効果は大きいことがわかる。

繰り上げ返済するタイミング

繰り上げ返済は早くすればするほど利息軽減の効果が大きくなるため、まとまった資金ができたらすぐに繰り上げ返済に充て、手元に現金がほとんどないという相談者も中には見かける。繰り上げ返済は早い時期にすればするほど効果的ではあるが、繰り上げ返済を頑張った結果、教育費が不足してしまい、住宅ローン金利より高い金利である教育ローンを借りるということになれば本末転倒である。

まずはライフプランに合った返済計画が重要である。長期固定金利で住宅ローンを借りている人は、繰り上げ返済後のライフプランを考慮しても無理がないと判断できれば、繰り上げ返済するタイミングである。ただ、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンを借りている人は、金利が上昇したら、毎月の返済額が増えるリスクがある。低金利の今は無理して繰り上げ返済するのではなく金利の上昇に備えて、まとまったお金を準備しておくことも選択肢として考えていただきたい。

金利の上昇面に「返済額軽減型」で繰り上げ返済すれば、毎月の返済額を抑えられ金利上昇による返済額が増えるリスクを避けることができる。繰り上げ返済のシミュレーションも各金融機関のホームページを利用すれば簡単に計算できるので、繰り上げ返済の軽減効果をチェックし、ライフプランと合わせながら無理なく繰り上げ返済するタイミングをみていきたい。

今関 倫子 ファイナンシャル・プランナー (AFP)
外資系保険会社勤務中にファイナンシャル・プランナー(FP)を目指し、AFP(日本FP協会認定)資格取得後、独立系FP事務所に転職。女性を中心に年間のべ200件以上のマネー相談を受け、多くの経験を経て独立。個人マネー相談、執筆、マネーセミナーを中心に活動中。 FP Cafe 登録FP。

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