Brexit
(写真=Thinkstock/Getty Images)

6月23日国民投票、キャメロン首相の賭けは実るか?

「Brexit(ブレグジット)」、すなわち英国(Britain)の欧州連合(EU)からの離脱(Exit)を巡る情勢が俄かに世界の注目を再び集め始めた。英国のキャメロン首相が2月21日、EU側とのEU改革案交渉でほぼ満足すべき合意が得られたとして、来る6月23日に国民投票で、EU残留か離脱かを英国民に問うことを発表したのが直接のきっかけだ。

ただ、英国でのEU離脱を問う選挙の話題そのものは急に持ち上がったわけではない。キャメロン首相は2015年5月の総選挙に勝利した際に、移民流入に反発する有権者を取り込むための公約として、EUに改革を求めたうえで2017年末までに国民投票を行うこと約束。同時点でキャメロン首相には十分な勝算があり、賭けに出ていたとのかもしれない。

しかし、欧州を取り巻く情勢はギリシャの債務危機や難民流入の激増などこの1、2年にわたって、首相の思惑をはるかに上回るテンポで揺れ始めている。さらには、次期英国首相候補として有力視されるボリス・ジョンソン・ロンドン市長がEU離脱を支持する運動に取り組むと発表したこともあって、国民投票の結果に関する見通しは次第に微妙なものとなりつつある。

万一、「離脱」が選択されたなら何が起こるのか。英国、欧州のみならず、世界的規模で注目される大きな論点を含んでいる。実際に、6月下旬に結果の出る、キャメロン首相の「賭け」は身を結ぶのか注目せざるを得ない。

そもそも英国にとって「EU」とは?

英国とEUとの関係を、今さらだが、少しおさらいしよう。第2次世界大戦後フランスやドイツを中心に「一つのヨーロッパ」という理想を目指して欧州の統合が進んできたが、その帰結である超国家的共同体が「EU」の狙いだ。具体的成果としては、が58年に発効した欧州経済共同体(EEC)、67年成立の欧州共同体(EC)を経て、EUは1993年についに発足した。加盟国数は当初は6カ国と少数だったものの、2013年以降28カ国を数えるに至っている。

「一つのヨーロッパ」の理念を現実のモノとするため、さまざまな取り組みも進んできた。加盟国間の国境の行き来を自由にする「シェンゲン協定」が1985年に出てきた上に、1999年には単一通貨ユーロが導入され、欧州中央銀行(ECB)を設置して金融政策面でも一元化を一層、推し進めた。

ただ、議論の的になっている英国は、シェンゲン協定に対しても、ユーロに対しても微妙なスタンスだ。同国はシェンゲン協定、ユーロのいずれにも参加しておらず、今回のEU離脱の是非を巡る国民投票にしても、2回目を実施しようとしているのだ。ちなみに、前回は欧州共同体(EC)加盟2年後の1975年、当時の労働党のウィルソン首相の下で国民投票を実施。67%が残留を支持し、英国はEC加盟国にとどまった。

元来、英国はEU大陸諸国と一線を画する姿勢を見せてきたが、経済の好調ぶりを背景にますます独自路線を貫こうとしていると言えるのかもしれない。

世論は割れ、マーケットは「Brexit」をなお不安材料視

今回合意されたEUの改革スキームのポイントは「英国が移民への福祉サービスに制限を設けること、ユーロ危機が起きても英国は救済措置に参加しないこと」を明確にしたことだ。キャメロン首相はこれをもって、国民投票にEU残留の是非を問う形だが、英国内の世論は予断を許さないものとなっている。

まず世論調査を見てみよう。従来は「残留」が「離脱」を上回る結果が多かったが、昨年以降の難民危機やテロの多発を背景に離脱派が勢いを増しつつある。2月19日に発表された世論調査会社「TNS」の結果では、離脱派が39%、残留派が36%、態度未定が25%とほぼ互角の勝負だ。

しかし、為替市場、オプション市場などマーケットの見方は、不透明感も加わって厳しいものとなっている。ポンドはユーロに対し、過去3カ月で9%下落。対ドルでも2月22日、約7年ぶりの低水準に迫った。

政界内部でもロンドン市長に加え、数人の現職閣僚と約100人の保守党議員も離脱派に加わると見られている。一方、産業界や金融界の多くは残留を支持。英国名物のブックメーカー(賭け屋)のオッズも一貫して残留が優勢と伝えられる。

Brexitは英国に、そして世界に何をもたらすか?

EU離脱が英国に何をもたらすかの損得勘定を見る際注目すべきは、離脱のメリットとデメリットが認識のしやすさと言う点で非対称性を持っている。

すなわち、離脱は(1)EUに握られていた国家主権の一部を奪還、(2)ユーロへの切り替えを迫られることなく、従来通り英国の通貨・ポンド札を維持、(3)移民向け負担も独自に判断、といった目に見えるメリットをもたらす。

他方で、EU離脱の英国にとってのデメリットとしては、(1)自由貿易に対する制約、(2)資本流入への制約(民間企業の「英国離脱」)、(3)EUの一体性を通ずる国際的発言力の喪失などが挙げられるが、いずれも何らかの代替策がありうるとして、すぐさま痛みを感じさせる性格のものではない。

ただ、英国では国内政治勢力を取りまとめるのも一苦労かもしれない懸念もある。例えば、親EU色の強いスコットランドやウェールズの離脱など英国分裂のリスクが顕在化すればロンドンにとっても大きな痛手となることだろう。世界経済への影響という視点では、投票までの駆け引き、投票結果、投票後の新たな枠組み作りなどに応じてさまざまなシナリオが想定される。

こうした「不透明性」それ自身が今回の「Brexit」に内在する最大の難点だろう。EU(欧州委員会)が「われわれはブレグジットを望まない」と言明しているのは当然として、米国政府も離脱後の英国と単独のFTAを締結する気はないと離脱派を牽制しており、選挙結果にも影響を与える可能性がありそうだ。(岡本流萬)

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