ECB,ドラギ総裁
(写真=Thinkstock/Getty Images)

米利上げに日銀のマイナス金利導入と主要国の金融政策にマーケットが右往左往しているなか、3月10日にECB(欧州中央銀行)理事会が開かれる。そもそも年初からの金融市場の混乱は、昨年12月のECBの追加緩和がきっかけだったとも言われており、汚名挽回といきたいとろだ。

今回の理事会でも追加緩和は既定路線となっており、注目を集めているのはその中身となる。以下では、これまでの経緯や最近の景気動向などを踏まえ、今回の理事会でどのような選択をするのかを考えてみたい。

1月の理事会で3月の追加緩和を示唆

前回1月21日のECB理事会では、「3月に金融政策スタンスを再評価し、場合によって再考する必要がある」との方針が示されており、ドラギ総裁も「金融政策を修正する準備がなければ、ECBへの信頼が揺らぐ」と述べるなど、追加緩和に前向きな発言をしていることから、3月10日の理事会で追加緩和が決定されることは確実といってもよいだろう。

しかし、議事録によると、1月の理事会は12月の失敗の反省会となったようで、具体的にどのような緩和措置が実施されるのかについては不透明だ。

ECBは昨年12月、既にマイナス圏にあった政策金利の下限を一段と引き下げたほか、量的緩和の終了期間の延長や買い入れ対象の拡充などの追加緩和を決定した。しかし、より積極的な緩和を確信していた市場は、これらの措置に失望し、ユーロの急騰と株価の急落など、金融市場は大きく動揺した。

こうした経緯から1月の会合では、過度な期待を抱かせずに、いかにして市場と対話をすべきかが議論の中心となり、その一方で年初からの株安で金融市場が不安定になっていたことから、とりあえずは追加緩和をメッセージとして残したものの、内容までは吟味されなかったもようだ。

景気動向からは追加緩和を急ぐ理由は見当たらない

1月の理事会後に公表された経済データをみる限り、景気が急速に悪化している様子は確認できず、追加緩和を後押しする材料は乏しい。ユーロ圏の10-12月期実質GDP(域内総生産)は前期比0.3%増加と7-9月期から横ばいとなり、おおむね巡航速度を維持している。また、1月の失業率は10.3%と4年5カ月ぶりの低水準となり、トレンドをみても改善傾向が続いている。

12月の理事会で公表されたECBのスタッフ見通しでは2016年の成長率を1.7%と予測したが、1月22日発表のECB専門家予測調査、2月4日発表の欧州委員会経済見通しのいずれにおいても、2016年の成長率は1.7%となっており、見通しにも変化はない。

堅調な雇用に支えられて個人消費も好調を維持しており、ECBが追加緩和を急ぐ根拠は薄いといえそうだ。世界的な株価の急落で、金融市場が不安定になっていたことから、1月の理事会では3月の追加緩和を示唆することで市場の不安を和らげたかったのだろう。

インフレ率の低下が悩みの種

景気は総じて堅調に推移しているなかで、ECBの悩みの種はインフレ率の低下となる。12月のスタッフ見通しでは2016年のインフレ率を1.0%としていたが、1月のECB専門家調査では0.7%、2月の欧州委員会では0.5%と見通しが急速に悪化している。

2月のユーロ圏のCPI(消費者物価指数)は前年同月比0.2%下落とデフレの状態にある。インフレ率の低下は、消費を押し上げる効果もあるので、必ずしも景気にとってマイナスになるわけではないが、ECBはインフレ目標として2.0%を掲げており、この水準からのかい離に神経質だ。

また、物価が低いほど通貨価値の目減りが小さいことから、インフレ率が低いほどユーロ高を招きやすくなる。ユーロの実効レートは昨年4月を底に上昇に転じており、ユーロ安という追い風が止み、物価の押し下げ要因にもなっている。

期待されているのは、利下げと量的拡大の合わせ技

12月の失敗を踏まえると、追加緩和の内容には量的な拡大も入れざるを得ないだろう。そうすると、ひな形は利下げと量的拡大の合わせ技となる。

利下げについては、これまでマイナス金利のマイナス幅拡大が0.1%刻みできていることから、現行のマイナス0.3%からマイナス0.4%への引き下げが順当なところだろう。ただし、12月の緩和時に下げ幅が小さすぎるとの批判もでていたことから、サプライズを狙うなら0.2%ポイントの引き下げもありうる。

量については、月次の債券購入額を600億ユーロから700億ユーロへと100億ユーロ増額することになりそうだ。量的緩和については、ECB内でも副作用への懸念が根強いことから、あまり多くは期待できない。したがって、買い入れ総額は変更せずに、金額を前倒しするという妥協がみられるかもしれない。

このほか、12月にも実施された買い入れ期間の延長や買い入れ対象資産の拡大、日銀が取り入れている階層化の導入なども検討されうるが、いずれも付随的な措置と位置づけられよう。

ECBは出資比率に応じて国債を購入しているので、出資比率が高いドイツ国債の過剰購入と比率の低い周辺国国債の購入不足が問題視されている。景気回復で追加緩和を必要としないドイツではなく、景気が低迷している周辺国こそ緩和を必要としているが、現在のスキームでは緩和効果が効率的に波及しているとは言いがたく、この点は改善余地が残されている。

よせばいいのに、やる気だけは満々

ECBはインフレ率低下の理由として中国経済の減速と原油価格の下落を挙げているが、ECBが追加緩和をしたところでこれらの要因にプラスに働くのかどうかははっきりしない。これまでの経緯からするとむしろ逆といえる。

幸いにして、中国政府は2月、4カ月ぶりに金融緩和措置を再開し、人民元の下落にも歯止めがかかるなど、中国の景気減速懸念は和らいでいる。また、1月下旬に1バレル=26ドル台まで下落した原油価格も3月上旬には37ドル台を回復するまで持ち直しており、こちらも底入れの兆しをみせている。

そもそも原油価格の下落や人民元の切り下げ懸念はECBにも責任がある。ECBとFRBの金融政策の方向性の違いがドル高・ユーロ安を招き、人民元の切り下げ観測につながったからだ。ドル高が是正されれば、緩やかにドルにペッグしている人民元も切り下げる必要はなくなる。また、ドル高は原油に限らず、ドル建ての商品価格を押し下げる。

ECBがなにもしなくても、FRBが追加利上げに動くことで、ユーロは軟調に推移することが予想される。英国のEU離脱問題でユーロが連れ安となっていることもあり、このタイミングでECBが追加緩和に動くとユーロ安が加速しかねない。その場合、ドル高を嫌気して原油価格が反落し、人民元の切り下げ観測も強まる可能性がある。

ドラギ総裁は、12月のトラウマからの失地回復を狙って、追加緩和をやる気満々なようだが、金融市場を安定させたいのなら、やめたほうがいいのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

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