2021年9月にデジタル庁が発足した。デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔としてDX (デジタル・トランスフォーメーション) を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指す組織だ。
したがって、株式市場等ではますます「DX」が注目される可能性が高くなる。特に、デジタル庁が関わる分野はより注目を浴びるだろう。今回は、デジタル庁発足で注目を浴びる業界について考えていこう。
そもそもDXとは何か
「DX」は「デジタル・トランスフォーメーション」の略語である。経済産業省が2018年12月12日に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン (DX 推進ガイドライン) Ver. 1.0」によると、DXの定義は以下のとおりだ。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
同資料でも指摘されているが、あらゆる産業においてデジタル技術を利用したゲームチェンジが起こりつつある。
デジタル化の遅れは、営利企業においては競争力低下に直結し、公共機関においては国民の利便性の低下を招く。また自国企業の競争力低下は、日本そのものの地盤沈下につながりかねない。
「デジタル庁」発足で注目される業界
ひと口にDXといっても、その対象は広い。デジタル庁の設立 (行政のデジタル化) によって、どのような事業を展開している業界や銘柄が注目されるのだろうか。今回は3つの視点で見ていこう。
1.行政保有データのオープン化、行政データ連携の推進
デジタル庁は、行政が保有するデータのオープン化やそれらの連携を進めていく予定だ。そうなると、ITサービス業界が注目を浴びるだろう。具体的には、顧客のデジタル課題を正しく把握し解決策を導いていくコンサルティング力や、具体的な解決策 (システム) を実施・運用していくソリューション力に長けている企業が注目される。
デジタル庁は「行政機関におけるクラウドサービス利用の徹底」も掲げている。これまで政府は、情報セキュリティ対策や移行リスクへの不安などから、クラウドサービスの利用にあまり前向きではなかった。しかし、デジタル庁はそれを大きく転換する方針だ。よって、クラウドサービスを提供している企業も注目されるだろう。
2.情報セキュリティ、個人情報保護
デジタル化における大きなリスクのひとつが情報セキュリティだ。特に官公庁は個人情報を扱うことが多いため、どのようなセキュリティを施して個人情報を保護していくかが問われる。
デジタル庁は、官公庁全体のセキュリティ強化の指揮を執る。中央省庁だけでなく、地方公共団体のセキュリティポリシーに関するガイドラインも改定し、地方公共団体がそれに基づいてセキュリティ対策を推進するよう働きかける。したがって、サイバーセキュリティ業界も注目されることが予想される。
3.業務におけるデジタル技術の活用 (デジタルワークスタイル)
デジタル庁は、「業務におけるデジタル技術の活用」の浸透も狙う。具体的には、情報システムの活用に加えてAIやRPA (ロボティックプロセスオートメーション) などを活用することにより、業務の効率化を目指す。同時にペーパーレス化やテレワークの推進など、「デジタルワークスタイル」の環境整備も進める。
日本では少子高齢化が進み、今後人口が減少すると予測されている。人口が減るのであれば、1人あたりの生産性を高めない限り経済成長は望めない。すでに指摘されていることではあるが、デジタル庁が旗を振ることで、これらの動きが加速していくだろう。
非対面コミュニケーションツールやAI、RPA、業務改善ツールなどを取り扱う業界に注目したい。
あらためてDX関連銘柄が注目を浴びる可能性がある
ここまで、デジタル庁発足で注目を浴びる業界について見てきた。デジタル庁が発足したことで、改めてDX関連銘柄が注目を浴びる可能性がある。実際に官公庁からの受注を受けたり、注目を浴びたりしたことが宣伝効果となって、業績を伸ばす企業も出てくるかもしれない。
個人投資家にとっては、それらは投資機会の増加につながるだろう。デジタル化はメガトレンドといえるため、直接投資をしないとしても、ビジネスパーソンとして「デジタル庁がどのような動きをするのか」というアンテナを張っておくべきだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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