今や中国はイノベーション先進国だ。AI(人工知能)やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、キャッシュレス決済、自動運転などの分野で、世界から注目を浴びている中国のベンチャー企業は少なくない。今回、スポットを当てるのは「空飛ぶクルマ」だ。
空飛ぶクルマの市場拡大を中国が牽引
現在、空飛ぶクルマの開発は世界的ムーブメントとなっている。各国で空飛ぶクルマの機体を開発するスタートアップ企業やベンチャー企業が増え、大手企業もこの流れに乗ろうと参入を発表するケースが目立つ。
空飛ぶクルマの市場規模の見通しについて調べた米モルガン・スタンレーの調査では、2040年の空飛ぶクルマの世界市場は、1兆5,000億ドル(約190兆円)規模まで拡大するという。
同調査では、特に中国が市場の拡大を牽引(けんいん)すると予想している。以下の表を見てほしい。2023年時点の予測でも、2040年時点の予測でも、中国が最大の市場だ。
2023年の中国の市場規模の見通しは360億ドル(約4兆5,000億円)、2040年は4,310億ドル(約54兆円)となっている。
<空飛ぶクルマの市場規模予測(モルガン・スタンレー)>
空飛ぶクルマの関連企業が中国で増加
上の表のように予測された理由として考えられる要因は以下の2つだ。
・中国で空飛ぶクルマの開発が活発に行われていること
・空飛ぶクルマの活用に対して中国政府が意欲を示していること
代表的な中国の企業 ―― Ehang、AutoFlight、HT Aero、吉利科技集団
空飛ぶクルマに関連する中国企業として、以下の4社を紹介しよう。
Ehang(米ナスダックに上場)
飛ぶクルマの機体開発メーカーとして、2人乗りの機体の開発を早くから進めていた。すでに量産工場の建設を発表しており、日本における空飛ぶクルマの実証実験で同社の機体が使用されたこともある。
AutoFlight(非上場)
4人乗りの空飛ぶクルマを開発して注目を浴びている。2022年2月には「空飛ぶタクシー」として、将来使う予定のコンセプト機のテスト飛行を成功させたことを発表している。
HT Aero(非上場)
中国の新興EVメーカーXpengの関連企業。限りなくクルマに近いデザインであることが同社の機体の特徴で、地上も走行でき、空も飛べる空陸両用だ。
吉利科技集団(非上場)
海外の機体開発メーカーとタッグを組んでこの分野に参入した企業だ。ドイツ企業のVolocopterとジョイントベンチャーを設立し、空飛ぶクルマを使った移動サービスを中国国内で展開する予定。
特許の面でも存在感を放つ中国
日本の特許庁が2021年4月に公表したデータを見ると、空飛ぶクルマの関連特許に関しては中国と米国の存在感が強い。特に特許出願人の国・地域別では、近年は中国が急増してアメリカを上回っている。日本は両者と比べて、かなり出遅れている。
空飛ぶクルマの機体の開発や実用化の状況は、今後の中国経済を占う重要なファクターだ。今後も最新情報をチェックしてほしい。
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