2022年11月にインドネシアでG20(20ヵ国・地域)のサミットが開かれる。注目されるのは、ロシアのプーチン大統領が出席予定ということだけではない。なぜなら世界的に存在感が増し台湾侵攻もうわさされる中国に対しG20サミットがどのような影響を与えるのかに関心が集まっているからだ。本稿では、G20サミットの概要や中国の動向について解説していく。

「機能不全」に陥っているG20

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(画像=sameer/stock.adobe.com)

2022年7月15日にインドネシアのバリ島でG20の「財務相・中央銀行総裁会議」が開催され同年7月16日に閉幕した。G20サミットに先立って行われた財務相・中央銀行総裁会議についても簡単に触れておきたい。財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアによるウクライナ侵攻を巡る先進7ヵ国(G7)側とロシア・中国の溝が埋まっていないのが現状だ。

2022年4月の会合に続いて共同声明を採択できなかった点は、特筆すべきことだといえる。日米欧は、開幕初日から「物価上昇の原因はすべてロシアにある」と非難を展開。足元では、世界的な食料不足やインフレーション、新興国の債務問題などの課題が山積みであるにもかかわらず共同声明を採択できなかった点を考えると国際組織のG20は機能不全に陥っていると言わざるを得ない。

中国を含む20ヵ国の首脳が参加するG20サミット

機能不全ともいえる「G20サミット」は、2022年11月15~16日にインドネシアのバリ島で開催予定だ。基本的にG20は、世界経済の成長や回復など経済に関する議題を論じる首脳会合と位置付けられる。G20サミットの枠組みを表にすると以下の通りだ。

G20(Group of Twenty)
G7(Group of Seven)BRICS(ブリックス)その他
・米国
・英国
・フランス
・ドイツ
・イタリア
・カナダ
・日本
・ブラジル
・ロシア
・インド
・中国
・南アフリカ
・アルゼンチン
・オーストラリア
・インドネシア(2022年議長国)
・メキシコ
・韓国
・サウジアラビア
・トルコ
・欧州連合(EU)

G20は、Group of Twentyの略で上記20ヵ国・地域の首脳が参加する国際会議だ。これらのメンバー国以外にも招待国や国際機関などが参加する。2022年に議長国となったのが開催地であるインドネシアだ。インドネシアが議長国を務めるのは初めてで今回が東南アジアで開かれる初のG20サミットとなる。メインのテーマは「Recover Together, Recover Stronger 」。

直訳すれば「(コロナ禍から)共に、より力強く回復しよう」といった意味になるだろう。開幕前から機能不全ぶりが露呈するなかで「共に」というのも皮肉な印象だが、今回はどのような内容が話し合われるのか。また中国には、どのような影響を与えるのかについても気になるところだ。

通常、G20では中国に矛先が向くことがないが……

まず前提として中国が参加しているG20では、中国に対する批判などが展開されることは少ない傾向だ。中国がメンバーに含まれていない「G7」では、中国に対する批判が展開されることがあるが、G20では中国が参加していることから基本的に中国関連の問題が議論のテーマとして取り上げられないだろう。

ところが2022年のG20サミットは、やや事情が異なる様相になるかもしれない。なぜなら議長国であるインドネシアがウクライナを招待したからだ。このタイミングでウクライナを招待したからには、ロシアによるウクライナ侵攻のトピックスがG20サミットで出てくると考えるのは自然な流れといえるだろう。

ロシアを巡っては、日米欧の多くの国が実際の経済制裁に踏み切っており今さらロシアの行動の是非を論じる段階にない。一方、G20という枠組みで各国の頭を悩ませそうなのが中国の存在だ。中国は、これまでロシアの侵略を非難せず西側(日米欧)の経済制裁を批判してきた。2022年7月のG20外相会合では、中国・ロシアの外相が会談し米国側への対抗姿勢を鮮明にしている。

ロシアに対する風当たりが強まるなか中国外務省は、ロシアはG20の「重要なメンバー」として擁護している。世界的には、ロシアを批判する国が多数派だ。G20のメンバーにおいても批判的な立場の国が多いため、G20をきっかけにロシアを擁護する中国に対する批判の声が高まる可能性がありそうだ。

中国の有利に働く可能性も

もちろん別の展開も十分に考えられる。2022年5月25日に外務省が公表した「令和3年度海外における対日世論調査」では、東南アジア9ヵ国の計2,700人にG20メンバーのうち最も信頼できる国を尋ねている。上位5位の結果は、以下の通りだ。

順位国・地域割合
1位ASEAN20%
2位中国19%
3位日本16%
4位米国14%
5位わからない12%

TOPは、ASEANの20%で次いで中国19%、日本16%という結果となった。米国は14%で、日本よりもさらに少なくなっている。大和総研によるとASEAN(東南アジア諸国連合)にとっての貿易の主役は、1990年代は日本だった。しかし2000年代以降は、中国が急速に存在感を高めている。外務省が公表している「目で見るASEAN」によると2020年のASEANの貿易主要国は、以下の通りだ。

【2020年におけるASEANの貿易主要国】

順位輸出輸入
国名割合国名割合
1位米国16.5%中国23.7%
2位中国16.1%韓国10.6%
3位EU9.5%日本8.5%
4位日本8.4%米国7.8%
5位香港7.2%EU7.6%

また、中国は、ミャンマーやラオスでASEAN諸国ごとの特性を考慮した戦略を練り大規模な鉄道、道路、港湾整備のプロジェクトを実施。資源・エネルギー確保では、ラオスやミャンマーとの取引が多い。経済的な結び付きが市民レベルで中国への親近感を生んでいると見られる。インドネシア自体は、外交的に中立性を重んじる国だ。

しかし、自国に好意的な感情が市民レベルで広がる東南アジアは、中国にとって半ばホームのような場所である。ロシアへの非難が高まりプーチン大統領がサミットに出席すれば主要国のなかには、欠席を選択する首脳も出るかもしれない。そうなってくると相対的に親ロシアの国々の存在感が高まる。つまり間接的に中国寄りの言動が繰り広げられる可能性を示している。

そうなれば初の東南アジア開催のG20サミットは、中国の有利に働くこともありえるだろう。

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