2023年に入り、中国の旧正月「春節」の時期が終わった。「中国人観光客の爆買い」が日本各地で見られたのは、新型コロナウイルス禍の今では昔話となりつつある。ただ中国政府が2022年12月上旬に厳格だったコロナ対策を緩和する方針に転換したことで今後人流に大きな変化が生じる可能性があるだろう。本稿では、春節を終えて新年を迎える中国市場で注目すべきセクターについて解説していく。

2023年の春節後、中国で注目度が上がるセクターは?
(画像=BigcStudio/stock.adobe.com)

目次

  1. 2023年はコロナ感染爆発の中での春節
  2. 2023年の春節はどうだった?
  3. 2023年の春節をきっかけに注目度が上がるセクターは?
  4. ウィズコロナで中国の立ち位置はどう変わるか

2023年はコロナ感染爆発の中での春節

2023年の春節は1月22日で休み期間は1月21~27日だった。春節前後の40日間における旅客数は約21億人になるとされる。中国は、近年の経済発展に伴い春節の休暇を利用して海外に出かける人が増加しておりコロナ前までは、その一部が日本にやってきて中国人がオムツや家電製品などを大量購入する「爆買い」が頻繁に見られていた。しかしそれもコロナ禍に入ってからは鳴りを潜めている。

それでは、2023年はどんな状況だろうか。現状の中国国内の感染状況について、日本のNHKは2023年1月の報道で「中国メディアは既に国内で6億人が感染したとの見方を伝えた」と紹介している。

中国の人口は現在、世界で最も多い14億人とされている。中国メディアの報道内容が正しいとすれば、中国は今、国民の2人に1人近くが感染している爆発的な拡大状況にあることになる。2023年の春節は、こうした環境下で迎えられていた。

2023年の春節はどうだった?

1月27日に終わった2023年の春節。ゼロコロナ政策からの転換が始まったこともあり、移動制限がない中、春節中の観光収入は前年に比べて約3割増となった。まだまだコロナ禍が始まる前の2019年の水準には戻っていないが、中国経済が今後上向いていくことを思わせる数字だ。

国内を旅行した人数は3億800万人。この数字は前年と比べて23%増だ。観光は地方経済の起爆剤になり、ゼロコロナ政策で業績が低迷していた地方企業にとっては、今後にかける期待は大きい。映画の興行収入も前年比でプラスとなった。

2023年の春節をきっかけに注目度が上がるセクターは?

中国でコロナ感染者が爆発的に増えているのは前述の通りだが、今年の春節は前年を上回る観光収入を記録した。では今後、株式市場はどう動くか。参考にしてみたいのは、感染拡大中の米国株式市場だ。

コロナ関連銘柄

米国株式市場では、米国政府の金融緩和策も後押ししてコロナ禍でグロース(成長)銘柄が大きく値上がりした。日本でも有名な主力ハイテク株である「GAFAM(Google、Amazon、Facebook※、Apple、Microsoft)などが該当する。なかでも「コロナ銘柄」として連想しやすいのはAmazonだろうか。同社は、コロナが中国国内で広がり始めていた2020年1月2日時点の株価の終値は94.90米ドル(分割後ベース)だった。

※現:Meta社

▽Amazonの株価推移

株価推移
(引用=TradingView

2023年1月13日時点でAmazonの株価は95米ドル程度となっているが、2021年夏~秋にかけては2020年1月の約2倍となる180米ドル前後まで上昇した。Amazonは、日本でもおなじみのオンラインショッピングのプラットフォームなどを提供する企業だ。中国でいえばネット通販大手のアリババ、電子取引サイト大手の京東商城(JDドットコム)あたりが該当する。

医療系銘柄

ワクチンに関連した医薬品メーカーも注目銘柄の一つだ。例えば米国のファイザーは、2020年1月2日時点で37.10米ドル(分割後ベース)だったが2021年末には59.05米ドルと約59%も上昇した。

▽ファイザーの株価推移

株価推移
(引用=TradingView

またアストラゼネカの2020年1月2日終値時点の株価は、50.39米ドルだったが2022年4月8日の終値では71.14米ドルと約41%の上昇となった。

▽アストラゼネカの株価推移

株価推移
(引用=TradingView

さらにトランプ前大統領がコロナに感染した際に使った治療薬を製造したリジェネロン・ファーマシューティカルズも注目したい。同社は、2020年1月2日終値の株価は373.35米ドルだったが、2022年末には721.49米ドルと約93%の上昇となっている。

▽リジェネロン・ファーマシューティカルズの株価推移

株価推移
(引用=TradingView

「アフターコロナ」とはいってもコロナが完全に消え去ることはないため、今後も長い付き合いになるという見方もある。そうであれば、ワクチンや治療薬に関連した企業にとっては息の長い上昇相場が期待できるかもしれない。

テック系銘柄

2022年、米国や欧州ではコロナ禍で進んだインフレを抑え込もうと政策金利を上昇させ始めた。しかし2023年1月時点でインフレには鈍化の傾向が出始めている。米国では、不確定ではあるものの金利政策が180度転換して利下げ方向に動くとの観測も強い傾向だ。もし利下げ局面に転換となれば負債比率が高いテクノロジー企業の株価に上昇期待が高まるのは、コロナ禍の米国市場が示す通りである。

特に2020年は、時価総額の大きなGAFAMが米国市場の上昇をけん引した。そのため同様の事態が中国で起こってもおかしくはない。もちろんコロナ禍に入ってからの年月や政治経済の統治体制は、2020年の米国と大きく異なるため、その点の注意は必要だ。しかし個別の企業の値動きを予測する材料として加味しない手はないだろう。

ウィズコロナで中国の立ち位置はどう変わるか

コロナ禍は、世界のさまざまな勢力図を塗り替えた。そのなかでも中国の強権的なコロナ対策は、外国企業にとって従来以上に不透明かつ不安定な要素として映った方も多いのではないだろうか。今後、ウィズコロナ・アフターコロナ時代に突入し、中国が本格的にコロナ対策を緩めるといっても世界経済に占めるポジションはコロナ前とは異なるかもしれない。

このような動向に注目し、米国や欧州の事例を分析しながら新年に入った中国の個別企業の動向を見極めていきたいところだ。

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