すき家
(写真=ZUU online 編集部)

すき家を運営するゼンショーホールHD <7550> は、2年連続で全パート・アルバイトの時給引き上げる方針だ。3月14日に同社が発表した資料によると、春の労使交渉において、2016年3月末在籍の約10万人の全パート・アルバイトの時給を平均2%上げるとのこと。また、約900人の正社員を対象としたベースアップも4年連続で実施する見通しだ。

牛丼チェーン店「すき家」は2014年に過重労働問題が発覚以降、店員が1人となる深夜時間帯での営業体制(いわゆるワンオペ)への批判から、すき家店舗全体の6割に当たる1200店舗で深夜営業を休止した。深夜営業店舗の大幅減少による機会損失の影響で、業績も大きな打撃を受けた。2015年3月期のゼンショーの業績は大幅に悪化。営業利益は前年の81億円から24億円と約7割弱の減益。純利益は前年の11億円から111億円の損失計上となった。

しかし、時給引き上げを背景に、昨年度はパート・アルバイトの総数は約5000人増加、深夜営業の休止も262店舗にまで改善している。

回復基調のまま進むのか?

一見順調な回復基調が見込めると思えるが、今後の楽観は禁物だ。①2016年10月の社会保険適用範囲拡大、②消費増税に伴う影響の悪影響が懸念される。

①については、現状では、週30時間以上かつ2ケ月以上の雇用見込みのある労働者が雇用保険、健康保険など社会保険の適用対象となっていたが、その範囲が大幅に増加する。一般的には、結婚しているパート主婦の方の負担増加がクローズアップされているが、当然適用対象が増えることは被用者である企業の負担が増加することを意味する。

特に外食産業の様なアルバイト・パートへの依存度の高い産業への影響は大きいといえるだろう。具体的には賃金アップ1%と同様の収益インパクトがあるとも言われている。

②については、2017年4月にも実施が見込まれる消費増税についてだ。一般消費者への影響緩和を背景に、酒類・外食を除く食料品、新聞などが軽減税率の対象となることが発表されている。つまり外食産業の強豪となり得る、コンビニやスーパーの弁当や惣菜など中食向けと比べて2%の価格差が生まれる。これにより、外食産業からコンビニ、スーパーへの顧客流出の懸念がある。

①人件費増加を吸収できるのか?

業績の回復途上にあるゼンショーにとってはまさに泣きっ面に蜂の状況に見える。ゼンショーの実力と比べて過大な悪影響の懸念を誘引しかねない印象だ。

まず、ゼンショー全体の収益構造を整理しよう。外食ビジネスは大きく分けて3つに分かれる。1つ目はすき家・なか卯などの牛丼カテゴリー、2つ目はファミリーレストラン業態のココス・ビックボーイ・ジョリーパスタなどのレストランカテゴリー、3つ目は回転寿しのはま寿司を中心としたファストフードカテゴリーである。

昨年度の売上高は5118億円、売上高構成は牛丼カテゴリー1735億円、レストランカテゴリー1520億円、ファストフードカテゴリー1056億円となっている。すき屋=ゼンショーというとらえ方をされることも多いが、ゼンショー全体の牛丼チェーン業態の売上高構成は33.9%にとどまっており、実はそれほど大きくないことが分かる。

ゼンショーの成長事業は、前期が+27.1%増収、今期も足元で二ケタ増収基調を見せているファストフードカテゴリー、つまりはま寿司である。

①の影響を考えてみたい。ゼンショー自体の人件費総額は開示されていないので、正確な算出は難しい。しかし、同業の中で唯一開示をしている牛丼チェーン店「松屋」の運営会社である松屋フーズの指標(今期予想ベースの販売費及び一般管理費に占める人件費率は54.4%)を参考にすると、今期のゼンショーの販売費及び一般管理費の予想は2947億円であるため、2947億円×54.4%=1603億円となる。賃金アップ1%の影響は1603億円×1%=16億円のマイナスインパクトと考えられる。今期営業利益予想を122億円としているゼンショーであれば吸収可能な数字だと判断できる。

消費増税影響は事業の本質で吸収可能

一方で②については外食産業全体に言えることだが、当然影響が出ることが想定される。しかし、外食とコンビニなど中食のターゲット層の違いを考えてみたい。

中食は主に会社勤めが多い若い世代が中心と思われる。相対的な所得水準がそれほど高くないため、価格差について敏感である。一方、外食のターゲット層は比較的所得の高い層が中心と思われるが、牛丼チェーン店業態は牛丼並盛400円弱、つまり外食産業の中でも比較的所得層の低い層をターゲットに据えてきた。中食へのシフトが見込まれる所得水準が低い層をメインターゲットとしてきたため、消費増税に伴う影響は多分に受けられると想像できる。

ただ、牛丼並盛400円の2%といえば8円である。8円を嫌がって中食にシフトする人がそれほど多くなる気は肌感覚ではあまりない印象だ。

飲食業界全体に言える傾向だが、今のトレンドは価格ではなく商品力という印象だ。提供する商品に顧客が満足すれば価格は多少高くても顧客は付いてくる。一方、商品力をないがしろにしてはどんなに価格が安くても、来店客は少ないだろう。

現に同業の吉野家は3月4日に今期予想営業利益を30億円から16億円に引き下げたが、その理由は価格帯の赤い牛すき御前の販売不振などが主な理由となっている。また、日本マクドナルドホールディングスの業績不振の背景が、いわゆる食の安全への懸念だった。マクロ的な視点に加えて、その店の提供する商品の質が高いのか、安全なのかも注意したい。(ZUU online 編集部)

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