要旨
2004年に公的年金の実質的な削減が決まり、老後の生活のための準備は、ますます自助努力による資産形成の重要性が高まっている。老後を豊かに暮らすためには、ライフプランの設計が欠かせない。適切なライフプランを立てるには、一定の金融・経済に関する知識(「金融リテラシー」)が必要である。
例えば、将来、生活費としてどのくらいのお金がいるかを予測し、それを貯めるためには、毎年、どの程度の貯蓄をすれば良いかわかる必要がある。また、どのような金融商品で貯め、運用するかについても考えなければならない。
このような金融リテラシーがなければ、適切なライフプランを自分で設計したり、あるいはファイナンシャル・プランナー等に設計してもらったりしても、それを理解することが難しいはずである。
しかし、残念ながら、30~35歳家計の金融リテラシーの水準は十分ではない。このような状態は、自助努力による資産形成が必要な時代にはあっておらず、改善が必要であろう。しかし、改善手段にも限りがあることも確かである。
近年、確定拠出年金(DC)や、少額投資非課税制度(ニーサ)の導入があり、金融機関から一定の運用に関する知識や情報提供等がある機会が増えたはずである。それにも関わらず、大きな改善はみられていない。金融リテラシーの向上は時間がかかるものであり、長期的に取り組んでいく必要があろう。
はじめに
2004年に公的年金の実質的な削減が決まり、老後の生活のための準備は、ますます自助努力による資産形成の重要性が高まっている。老後を豊かに暮らすためには、ライフプランの設計が欠かせない。
ファイナンスの研究に従えば、適切なライフプランを立てるには、一定の「合理性」が必要である。例えば、将来、生活費としてどのくらいのお金がいるかを予測し、それを貯めるためには、毎年、どの程度の貯蓄をすれば良いかわかる必要がある。
そのためには、複利計算や現在価値への割引という概念を知っていなければならない。また、どのような金融商品で貯め、運用するかについても考えなければならない。これには、金融商品に対する一定の基礎的な知識も必要である。
このような金融・経済に関する知識(「金融リテラシー」)がなければ、適切なライフプランを自分で設計したり、あるいはファイナンシャル・プランナー等に設計してもらったりしても、それを理解することが難しいはずである。
Lusaridi and Mitchell (2011)等の国内外における研究でも、金融リテラシーと資産形成には、大きな関連性があるとされている。そこで、日本の家計に金融リテラシーどの程度あるのか、また、金融リテラシーの程度の違いにより、老後のための資産形成の方法にどのような違いがあるのか、独自のデータを利用して検証した。