結論と課題

30~35歳家計の金融リテラシーの水準はそれほど高くない。これは、合理的なライフプラン設計が難しいことを意味している。自助努力による資産形成が必要な時代にはあっておらず、改善が必要であろう。

しかし、改善手段にも限りがあることも確かである。政府等のアンケート調査によれば、このような知識を得る機会として、金融機関からの情報提供、家族での話しあい、テレビ・新聞・雑誌・WEBなどがあげられている。

自分で掛金を運用するタイプの年金制度である確定拠出年金(DC)の導入や、運用益が非課税となる少額投資非課税制度(ニーサ)の導入があり、近年、金融機関から一定の運用に関する知識や情報提供等がある機会が増えたにも関わらず、(直接、昔と比較したわけではないが)大きな改善はみられていない。金融リテラシーの向上は時間がかかるものと考えられる。長期的に取り組んでいく必要があろう。

今回は、金融リテラシーが老後の準備や金融商品の保有に関連性があると想定して分析を行った。しかし、実は、逆の可能性もある。つまり、何らかの理由により、老後の準備や金融商品の保有に関心があると、金融リテラシーが高まるというルートである。近年では、このような相互関係を考慮して分析を行うことが主流であり、今後の課題としたい。

参考文献
Lusardi A. and O. Mitchell (2011) “Financial Literacy and Retirement Planning in the United States," Journal of Pension Economics and Finance 10(4), pp.509-525

北村智紀(きたむら ともき)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

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