株式市場は将来、企業業績が今よりもよくなるかどうかを吟味し、今の時点で「将来」を評価する場所です。企業業績が今より良くなりそうだと判断する人が多くなれば、対象株式は買われ、株価は値上がりしやすくなります。増配も見込め、投下資金の運用利回りアップが期待できます。

逆に「どうも先行き難しそうだ」と感じる人が多くなれば「今のうちに売っておこう」「安くなってから買えばいい」と判断され、値下がり傾向が強まります。

では、現状はどちらでしょうか? まず、注目すべきは2016年を迎えて外国人投資家による日本株の大量売り越しが続いている点です。ちなみに、外国人投資家が大量に日本株を買い越したのは2013年でした。2013年といえば9月7日、夏季オリンピック開催地に東京が決定した年です。それを見越したかのように、外国人投資家は2012年11月後半から怒涛の勢いで日本株に投資を始めたのです。

しかし、2014年は少額の買い越しにとどまり、2015年は少額売り越し。そして2016年は年初から売り越しているのです。

まずは自分なりの投資戦略を熟考する

そこで個人投資家として一考を。もしも、アベノミクスにこの先も実りが期待できると外国人投資家が考えるのであれば、売り越しにはならないのではないか? いや、初期の投資目的は達成したので資金配分をまた新たな別の地域に投下するのだろう、という具合に様々な角度から検討して、今後の自分の投資戦略を熟考したいですね。

投資の世界では、何かが始まるとき、「真っ先に動く人」はごく少数です。100人なら3人くらいの比率です。次に「面白そうだ」と続く人は13人くらい。「じゃ、私も」と続く人が34人くらい。これで合計50人で、すでに全体の半分です。この流れができると、ブームといえる現象になります。

残りの50人はどういう役割を果たすか考えると構造は自明です。株の場合は先発隊の買ったものをブームに酔って喜んで高値で買う人になってしまいがちです。

こうした現象は人間の「取り残されたくない」という行動心理を巧みに突き、人為的に引き起こすことができるといえます。

今までの市場動向に当てはめると、外国人投資家がわっと日本株を買い、上昇に弾みがついたところにオリンピックが決まり、懐疑的だった個人投資家も本格的に参入。この段階で、ちょうど真ん中の50%あたりに相当します。

株式市場が高値で盛り上がったのはNISAが始まった2014年から2015年あたり。特に2015年11月には日本郵政3社が上場されたので、個人の投資マネーが株式市場に流入しやすい状況だったといえるでしょう。

負けない投資の基本の「き」

結果から逆に考えると、外国人投資家は一番乗りでわっと日本株を買ったグループの最先端にいました。そして、残りの50%の人たちが買い出動して来れば、相場は下降方向になると見て、利益確定の出口戦略として現状は売り越していると考えることができそうです。

巷間では「消費増税が延期されれば、外国人投資家は再び買ってくる」という見方もありますが、その可能性も吟味しながら、投資家としては「選挙後、政治はどうなるか?」を上げ方向、下げ方向、まさかのシナリオで考える視点が必要です。具体的には下記の4点です。

(1) 7月選挙後、9月頃国会召集として組閣も含め、何をどう進行させるのか?
(2) 消費増税、TPP、改憲問題は実際どうなるのか?
(3) 消費増税を見送ると財政は大丈夫なのか?
(4) 安倍首相が野田元首相のように選挙後、交代する可能性はないのか?

そして外国人投資家の視点にたって「この国の企業に今よりももっと増益となる経済環境があるか?」を政治動向と絡めて、冷静に検討することが「負けない投資」の基本の「き」になります。

割安株を見つける指標のPBRに着目

さて、将来の景気、経済がよく分からないときの投資行動には3つあります。一つは「分からない間は休む」。もしくはインカムゲインの充実を目指し、株価と配当、優待が安定している「カレンダー投資(©木村佳子)」向きの銘柄を揃えていく。あるいは「経済環境がどうあれ、割安株を探して打診買いをする」等があります。

どれも賢明な対応ですが、経済環境がはっきりしない時、「企業の持っている純資産」と株価の関係を知る指標PBRで投資対象を探す、という「PBR割安株投資」は失敗しにくいといえます。企業のすべての資産から借入金などを引いた企業の純資産=株主資本を発行済株式数で割り、求めた一株純資産と現実の株価の関係を数値化したものがPBR(プライス ブックバリュー レシオ)です。

目下、株式市場では自己資本を充実させ、借入金を減らしている企業が多くなっています。その結果、PBR1倍割れの銘柄がとても多くなっています。純資産より現実の株価が低い1倍割れは、資産価格のほうが株価より高い状態であり、会社を解散した場合、株価以上の資産をもらえる勘定になります。

今後、マイナス金利を利用してコストの安い借入金によって自社株買いを行う企業も出てくる可能性が考えられます。そうした流れが、外国人投資家の日本株売りで需給バランスが崩れている状況にプラスになるかもしれません。

今の時期に割安株を見つける指標の一つであるPBR1倍割れでかつ、配当原資となる一株純利益が極端に減少していない企業の中から投資対象を見つけてみるのもいいかと思います。

投資のポイントは極端にPBRが低い銘柄ではなく、おなじみの社名が多く見つかるPBR0.7~0.9倍あたりから、(1) 安定的事業(極端に為替や景気に左右されない事業)、(2) 配当原資の一株純利益が極端に減少していない企業、(3) 有配当……の条件に合う銘柄を探してみましょう。

木村佳子(きむら・よしこ)
生活経済情報研究所 ㈱ビューズ代表、日本取引所JPX/女性講座グランドマスター。個人の生活経済、金融リテラシー、ストラテジーをテーマに民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催するセミナー等での基調講演を務めるかたわら、NPO法人日本IRプランナーズ協会理事、日本チャート分析家協会、一般社団法人くらしとしごと生活者フォーラム代表理事などの要職も務める。一級FP技能士(国家資格)。日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP。公的面では各省庁の審議会委員、専門委員などを務める。

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