金融市場(3月)の動きと当面の予想

◆10年国債利回り

◇3月の動き 月初▲0.0%台半ばからスタートし、月末も▲0.0%台半ばに。

月初、一旦利益確定の動きが優勢となり、3日にかけてマイナス金利幅を縮めたものの長続きせず、好調な入札を受けた8日には▲0.1%を付ける。その後、高値警戒感から反動が起こり、9日に▲0.0%台前半に戻る。

しばらく膠着ぎみの推移を辿った後、18日には円高・株安に加え、日銀オペで国債需給の逼迫が示されたことで再び低下、▲0.1%となる。以降、▲0.1%付近での推移が続いたが、月末には年度初めの投資家の国債売りを警戒する動きが出て、▲0.0%台半ばに上昇。

◇当面の予想

今月に入り、▲0.0%台半ばから後半の推移が続いており、足元も▲0.0%台後半にある。最近は、日銀のマイナス金利幅(▲0.1%)付近になると債券の高値警戒感から売られやすく(金利は上昇)、▲0.0%台前半では値ごろ感から買いが入りやすい(金利は低下)状況にある。

この相場観を変化させる要因としては、日銀の追加緩和(観測)と、米利上げ観測に伴う米金利の上昇が挙げられるが、どちらも当面は見込みがたい。従って、長期金利はしばらく▲0.1%付近から0.0%のボックス圏で、入札や日銀オペの結果を見ながら一進一退する展開になりそうだ。

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◆ドル円レート

◇3月の動き 月初112円台前半からスタートし、月末は112円台後半に。

月初、堅調な米経済指標を受けて米経済に対する過度の悲観が後退、2日には114円台を回復した。その後、中国経済指標悪化を受けたリスク回避などで、8日には112円台に戻る。

以降は原油価格の持ち直しを受けたリスク回避の後退で、10日には113円台を回復し、しばらく維持したものの、3月FOMCでの利上げに対する慎重姿勢を受けて、18日には111円台前半に円高が進行。

その後は複数のFRB高官が4月利上げの可能性を示唆したことによって、25日には113円台を回復したが、29日の講演でイエレン議長が利上げへの慎重姿勢を打出したことで再びドル安圧力が高まり、月末は112円台後半で着地した。

◇当面の予想

今月に入り、FOMC議事要旨でFRBの利上げに慎重なスタンスが改めて確認されたこと、安倍首相による為替介入に否定的ととれる発言が報じられたことから円高が加速し、足元は109円付近で推移している。

現在は円安・ドル高材料が明らかに不足しており、円売り介入への警戒感も後退しているため、円高が進みやすい環境にある。従って、当面は少なくともドルの上値は重そうだ。G20(14-15日)、主要産油国の増産凍結協議(17日)など重要イベントの結果次第では、介入観測後退やリスク回避的な円高の加速も有りえる。

円安に転じるには現在おもいっきり低迷している6月の米利上げ観測(債券市場の織り込みは15%台)の復活が必要だが、しばらく時間がかかりそうだ。今月28日のFOMCで地ならしが始まるかが焦点となる。

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◆ユーロドルレート

◇3月の動き 月初1.08ドル台後半からスタートし、月末は1.13ドル台後半に。

月初、前月末に急落した影響で持ち高調整のユーロ買いが入り、3日には1.09ドル台に。資源価格持ち直しに伴う対資源国通貨でのドル安がユーロドルに波及し、8日には1.10ドル台に上昇。

その後、一旦ユーロ安となったが、10日のECB理事会後にドラギ総裁が今後のマイナス金利拡大に否定的な見解を表明したことを受けてユーロ買いが進み、14日には1.11ドル台に上昇。

さらに、3月FOMC後にドル安圧力が強まり、17日には1.13ドル台に。下旬にはFRB高官によるタカ派的発言もあり一旦ドルが買われたが、イエレン議長発言が帳消しにし、月末は1.13ドル台後半で終了。

◇当面の予想

今月に入り、FOMC議事要旨で利上げへの慎重姿勢が示されたことで、足元も1.13ドル台後半で高止まりしている。最近のユーロドルはユーロ側の材料が不足ぎみで、米国(ドル)側の材料で動く傾向が強い。

当面は6月の米利上げ観測が高まりにくい状況が続くと予想され、ユーロドルは高止まりしそうだ。原油安リスクは現在も高いと見ているが、原油価格が下落する際には、低金利通貨であるユーロにリスク回避的な買いが入ることで、ユーロドルが上振れる可能性もある。

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上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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