要旨
◆中国経済は成長ペースが鈍化している。2016年1-3月期の実質成長率は前年同期比6.7%増と2015年の前年比6.9%増を下回った。第2次産業「急ピッチな減速」、第3次産業「8%前後の比較的高い伸び」、全体では「緩やかな減速」という状況が続いている(下左図)。足元では、第2次産業の「急ピッチな減速」に歯止めが掛かったことで、景気底打ち期待が浮上した。
◆個人消費は比較的高い伸びを維持しているものの伸び悩んでいる。雇用指標に大きな落ち込みは見られず、中間所得層の充実というトレンドが引き続き追い風となることから、今後も比較的高い伸びを維持すると見ている。但し、景気減速で賃金上昇率が鈍るのに加えて、インフレ率の底打ちで実質所得が目減りすることから、実質消費の伸びは若干鈍化するだろう。
◆昨年大きく減速した投資は2016年に入り持ち直した。特に不動産業とインフラ関連の投資が加速した。今後を考えると、過剰設備・過剰債務を抱える製造業では伸びの鈍化が続くものの、消費主導への構造転換が追い風となる消費サービス関連や、新型都市化・環境対応で大きな潜在需要を抱えるインフラ関連や不動産業は堅調で、投資の伸びは若干加速すると見ている。
◆住宅市場では、購入制限の緩和や金融緩和により販売が増勢を強め、価格は上昇、在庫は減って新規着工が増え、住宅市場のサイクルは上向いた。景気には支援材料となる。但し、都市別に見るとバブル懸念と下値不安が混在、中国政府は住宅販売の促進と住宅バブルの抑制という正反対の政策を同時に実施しているため、全国一律で作用する金融政策の舵取りは難しい。
◆経済見通しとしては、2016年の実質成長率は前年比6.6%増、2017年は同6.5%増と「緩やかな減速」を予想する。また消費者物価は原油価格上昇から緩やかな上昇基調を予想する(下右表)。金融市場の動向としては、米利上げが先行し中国の利上げは1年程度遅れることから米中金利差は縮小、人民元は2017年夏に1米ドル=6.7元程度までの下落を予想する。