供給面の動き
中国経済は成長ペースが鈍化している。2014年の実質成長率は前年比7.3%増、2015年は同6.9%増、2016年1-3月期は前年同期比6.7%増と「緩やかな減速」となっている。
この「緩やかな減速」の内訳を見ると、第2次産業が「急ピッチな減速」だったのに対し、第3次産業は「8%前後の比較的高い伸び」を維持して、合わせて「緩やかな減速」となったことが分かる。
第2次産業は、2010年の前年比12.7%増をピークに、2015年には同6.0%増そして2016年1-3月期には前年同期比5.8%増と通算7ポイント弱の「急ピッチな減速」となった。一方、第3次産業は、2012年は前年比8.0%増、2013年は同8.3%増、2014年は同7.8%増、2015年は同8.3%増、そして2016年1-3月期は前年同期比7.6%増と、2012年以降も「8%前後の比較的高い伸び」を維持している(図表-1)。
その結果、GDPに占める第2次産業の比率は46.2%(2010年)から40.5%(2015年)へ低下、第3次産業は同44.2%(2010年)から50.5%(2015年)へ上昇して、2010年には第2次産業の比率が第3次産業より2ポイント大きかったが、2015年には逆転して第3次産業の比率が第2次産業より10ポイントも大きくなった。
供給面から中国経済の行方を見る上では3つのシナリオが描ける。第2次産業の「急ピッチな減速」と第3次産業の「8%前後の比較的高い伸び」が継続し「緩やかな減速」が続く(現状維持シナリオ)、第2次産業の「急ピッチな減速」が第3次産業にも波及し減速ピッチが速まる(悲観シナリオ)、第2次産業の「急ピッチな減速」に歯止めが掛かって安定成長に移行する(楽観シナリオ)の3つである。
どのシナリオになるかをいち早く発見するためには、第2次産業の動きを映す製造業購買担当者景気指数(製造業PMI)と第3次産業の動きを映す非製造業商務活動指数(非製造業PMI)に注目している(*1)。
ここもとの両指標の動きを見ると、2016年2月時点では製造業PMIが大きく低下し、非製造業PMIも低下して、悲観シナリオの可能性が高まり、市場は景気失速懸念に揺れることとなった。ところが、直後の3月には一転、製造業PMIが拡張収縮の分岐点となる50%を回復して、非製造業PMIも回復、楽観シナリオの可能性が高まって、景気底打ち期待が浮上してきた。
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(*1)第2次産業・第3次産業と製造業・非製造業の区分は一致せず、第2次産業に含まれる建築業が非製造業に位置付けられるなどの違いがある。但し、他に有効な統計指標がないため、「第2次産業≒製造業」、「第3次産業≒非製造業」と見なしてモニタリングしている。
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