souzoku
(写真=PIXTA)

2015年1月1日に、相続税に関する税制が改正された。この改正により「控除額 (相続税が課税されない相続財産額) 」が引き下げられ、今まで相続税とは無縁だった家庭にも「相続税」の問題が降りかかってくる可能性が出てきた。

相続税の税制が改正されたことで、相続財産を残すよりもできるだけ生前に有効に使おうと考える人が増え、結果的に市場にお金が流通することを狙った政策だという声もある。今回は、改正された相続税の税制にどのように対処したらいいかを説明しよう。

1. 改正相続税法のポイントは ?

新しい相続税の税制を見ると改正点はいくつかあるが、何と言っても「基礎控除」が大幅に引き下げられたことが最大のポイントだ。控除額とは、相続税がかからない相続財産の金額のことである。改正前の控除額は「5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人数」だったが、改正後は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」となった。

相続財産額が7,000万円、法定相続人が3人 (配偶者、子2人) の場合を例にとって説明しよう。

改正前であれば控除額は「5,000万円 + 1,000万円 × 3人 = 8,000万円」となり、相続財産額が控除額を下回っているため相続税はかからない (非課税) 。しかし、改正後の控除額は「3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円」となり、相続財産額が控除額を上回る。そのため、上回った「7,000万円 - 4,800万円 = 2,200万円」に対して相続税が課税されることとなる。

ちなみに2,200万円の場合、税率は「15%」なので「2,200万円 × 15% = 330万円」となり、330万円を相続税として納めなければならない。なお、配偶者の場合は、「配偶者の税額軽減」により、相続した財産が1億6千万円以下、または、1億6千万円を超えた場合であっても法定相続分までなら相続税額がゼロとなる。

現在、日本では年に100万人以上が亡くなっている (厚生労働省『平成27年 (2015) 人口動態統計の年間推計』より) 。今回の改正によって、相続税を納めるケースが増加していくと考えられている。

2. 改正相続税法の真の狙いは ?

相続税の税制改正により、被相続人の存命中にできるだけ相続人に財産を移転することで相続財産を減らし、相続税額を減らすことができないかという考えをたくさんの人が持つようになる。2015年の改正はまさにそこが狙いであり、生前贈与などの方法でできるだけ財産の世代間移転を促し、消費を拡大させることで経済を活性化したい、消費税などの税収を増やしたいという意図があると考えられる。

また、2003年に「相続時精算課税制度」が設けられたが、この制度は文字通り「相続時に税額を精算する制度」のことで、贈与税と相続税が一体になったものだ。この制度を設けた意図も、相続財産を生前に子どもに移転することで結果的に市場にお金が流通するようにしたいという政府の思惑の表れだと言える。

3. 生前贈与とは ?

相続財産を減らす方法としては「生前贈与」が考えられる。しかし、ここで注意したいのは「贈与税」の存在だ。

1年間に110万円を超える金額の贈与を受けた場合、贈与税が課税される。この贈与税の税率は相続税の税率より高く設定されているため、生前贈与を行う際には注意が必要だ。

一度に多額の財産を贈与すると、高額の贈与税が課せられる。そこで、1年間に課税されない額 (110万円以下) を、長年に渡って贈与していく方法 (暦年贈与) をとるのが一般的だ。

例えば、法定相続人が3人いた場合、5年間に亘って110万円ずつを全員に贈与すれば、「110万円 × 3人 × 5年 = 1,650万円」となり、相続財産を1,650万円も減らすことができる。

なお、この暦年贈与にも注意が必要だ。毎年、同じ時期に同じ金額を贈与している場合など、「最初からまとまった金額を贈与するつもりだった」とみなされ、一括贈与として高額の贈与税が課されることがあるためだ。

4. 相続時精算課税制度とは ?

暦年贈与を利用することで相続財産を減らすことが可能だが、多額の相続財産がある場合に1年で110万円ずつを減らしていく方法は効果があまり期待できない。また、相続開始 (被相続人が亡くなる) 前3年以内の贈与は、相続財産に算入しなければならないため、出来るだけ早い時期に贈与を開始しなければならないのである。

そこで、「相続時精算課税制度」の利用を検討するといいだろう。親から子どもへ財産を贈与したときの贈与税を一律20%として、この贈与税を相続税の「仮払い」とするものだ。しかも、この贈与には2,500万円の非課税枠が設けられている。

具体例を説明しよう。

親が子どもに3,000万円贈与したとする。この贈与は1度に全額行っても、複数年に渡って行っても構わない。控除額を超えた500万円に20%の贈与税 (100万円) がかかることとなる。この時納めた100万円が、将来の相続税の「前払い」となるのだ。

親が亡くなって相続が開始された時には、相続財産に贈与財産を加えた上で相続税を計算し、算出された子どもの相続税額から既に納めている贈与税を差し引く。残った金額が実際の納付税額ということになる。

ただし、一度この相続時精算課税制度を選択すると、その親からの贈与は、その年以降、暦年贈与に変更することができなくなる点は注意が必要だ。

5. 生前贈与で気を付けることとは ?

生前贈与として、暦年贈与と相続時精算課税制度を紹介した。2015年の相続税の税制改正によって、生前贈与などの対策を考えている人は確実に増えている。相続税対策を考えるうえで、生前贈与の内容やメリット・デメリットを検討して、実行に移す必要がある。(提供: 大和ネクスト銀行

【関連記事 大和ネクスト銀行】
投資の一歩はここから ! 老後の資産形成に考えたい積立投資の仕組みとメリットを公開
貯蓄上手な人の3つの目的別口座のススメ
ジュニアNISA口座のメリットを一番受けられる賢い使い方とは ?
「楽しい老後」のために自分で考えなければならない資産形成のポイント
メガバンクの4倍以上の金利を得る方法 ? ネット銀行 × 証券口座の連携のすすめ