2016年はゲーム市場におけるVR(Virtual Reality:仮想現実)元年になりそうだ。3月にはPCに接続して使用するVRヘッドセットの本命といわれる「Oculus Rift」が発売されており、10月にはソニー <6758> がプレイステーションVR(PSVR)の発売を予定。ヘッドマウントディスプレイの本命が年内に出そろう見通しだ。
PSVRには、ソフトウェアメーカー230社以上が160本以上のソフトを開発する予定で、VRゲーム関連のビジネスも活発化しそうだ。ゲーム市場において存在感が増すVRの現状と、メーカーの動向を見ていきたい。
ゲーム市場で進むスマホアプリへのシフト
VRを取り巻く国内のゲーム市場の縮小傾向が止まらず、各メーカーは苦しんでいる。『ファミ通ゲーム白書2016』によると、2015年の国内家庭用ゲーム市場の規模は対前年比11%減となる3602億円となり、2007年のピーク時の6876億円から大きく落ち込んでいる。同市場の規模が最も拡大していた時期と比べれば、半分以下の規模に落ち込んだ計算だ。
一方、オンラインゲームアプリの市場規模は対前年比27%増の9989億円であり、国内ゲーム機市場規模(1兆3591億円)の4分の3弱を占めるまで成長している。国内ゲーム機市場の縮小は各メーカーへの業績にも影響。ゲーム機最大手任天堂の2016年3月期決算は、売上高が前期比8.2%減少の5044億円。当期純利益が前期比60.6%減少の165億円であり、大幅な減収減益となった。
ゲーム市場では家庭用ゲーム機からスマホアプリへのシフトが急速に起きており、家庭用ゲーム機を手掛けるメーカーは売上増の起爆剤を求めているのが現状だ。
将来有望なVRデバイス市場
売上増の起爆剤として各メーカーが期待しているのがVRデバイス市場である。調査会社IDCの発表によると、VRデバイス市場はサムソン(韓国)、ソニー(日本)、HTC(台湾)、Oculus(米国)といった主要メーカーが製品を投入することで、2016年に960万台と予想している。2020年には出荷台数が6480万台に達するとみられており、4年間で6.75倍もの規模にまで成長する計算だ。
この出荷台数の急速な伸びによって、VR市場の規模も急拡大する。VRヘッドセットについては、調査会社ガートナーが2020年には世界全体で約4000万台も販売されると予測。
仮に、PSVRが4000万台売れたとすれば、主要なVRヘッドセットの中でも4万4980円と最安値の計算であるにもかかわらず、1兆7992億円にも達する。素直に数字を信じれば、国内ゲーム機市場を越える規模の市場がわずか4年で立ち上がることとなる。
今度の急成長が予想されるVRデバイス市場は、各社が参入を狙っている分野である。「Oculus Rift」を販売する米国Oculus社は、米国Facebookが2014年に20億ドル(約2140億円)で買収しており、今後もVRデバイス市場を取り巻く動きが活発化しそうだ。
VRデバイス普及による波及効果
VRデバイス普及により恩恵を受けるのは、VRヘッドセットメーカだけではない。VRヘッドセットが普及することでより臨場感の高いゲームを楽しむことができ、ゲームソフトの売上も伸びると予想される。たVRヘッドまセットやそれを活用した臨場感の高いゲームを動かすためには、高性能のCPUや画像処理チップが必要となり、半導体を中心としたデバイスメーカーにとってもビジネスチャンスである。
ゲーム分野については、実際にPSVR用ソフト開発には以下のように国内の多くのメーカーが参入している。特に注目なのは「妖怪ウォッチ」「レイトン教授」「イナズマイレブン」を販売しているレベルファイブである。レベルファイブはアニメなどの他メディアとコラボレーションして、小学生を中心とした子供向けのゲームソフト作りには定評がある。
ほかにも、「モンハン」として『モンスターハンター』でヒットを飛ばしたカプコン <9697> や、「パズドラ」を世に出したガンホー <3765> 、『白猫プロジェクト』の製作元であるコロプラ <3668> など、ヒット作品を出してきたゲームメーカーがVRゲームの開発にも取り組んでおり、どんなゲームが出てくるのか、期待も高まる。
レベルファイブを筆頭に、PSVR向けのどんなソフトを開発し、どんなメディアと組んでどういったプロモーション各社が展開するのかが注目だ。(ZUU online 編集部)
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