目先の財政再建にこだわると、デフレに逆行するリスクも
二つ目は、財政政策と社会保障との関係である。
財政債務残高や高齢化を恐れる過剰な悲観マインドにより、目先の財政再建に拘り、増税などの財政緊縮を過度に進めてしまうと、需要不足と過剰貯蓄に陥ってしまうことになる。もともと需要不足である中で、高齢化の進行以上に貯蓄が大幅に前倒され、財政が緊縮的であることは、総需要を破壊し、短期的には更に強いデフレ圧力につながってしまう。
デフレにより実質金利が実質成長率を上回る状態が継続してしまい、企業活動は更に萎縮し、家計の雇用・所得環境を更に悪化させる。企業の意欲と活動が衰えると、イノベーションと資本ストックの積み上げが困難になる。その結果、高齢化に備えるためにもっとも重要な生産性の向上が困難になってしまう。
デフレと景気低迷を放置しておくと、生産性の向上が限界になり、生産性が低下し始めたところで、一転してインフレと景気低迷の同居のリスクとなる。生産性が低下してしまえば、高齢化の負担の増加が、所得の増加をいずれ上回り、国内貯蓄は減少していく。
国際経常収支の赤字が続くとともに、日本は債務超過国となり、インフレ圧力が強くなる。国債金利は急騰していき、それが企業活動を更に抑制し、雇用・賃金が減少していく。税収が落ち込む一方で、金利コストは増加し、高齢化の負担もあり、財政赤字は膨らんでいき、財政の安定感が失われてしまう。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト
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