過信(4)「ウチに限って争いは無い」は相続後に夢破れる

影響力の強い創業者やカリスマ経営者の言うことは家族全員が聞き、逆らう事がないために「ウチに限って相続争いは無い」「兄弟姉妹みな、仲が良いので相続でもめることはまず無い」「自分が死んだら仲良く分けてくれ」といった考え方は極めて危険である。

相続後に家族仲を壊す結果に繋がることもある。亡くなった後に配偶者や事業承継者の言うことを他の相続人全員が聞くとは限らない。偉大な創業者・経営者と同じ影響力を期待すること自体が無理である。争いは死亡後、相続発生時に始まるからだ。

過信(5)「税理士に任せておけば大丈夫」とは限らない

あなたの会社の決算、個人の確定申告を長年担当してきた税理士が相続のスペシャリストであるとは限らない。

医師の中でも、特定分野のスペシャリストやゴッドハンドが存在する様に、長年相続案件に向き合っている税理士に任せる方が無難である。相続税の申告をした被相続人は5万6239名(データ:国税庁平成27年12月発表平成26年分)、税理士の登録者数は7万5627名(データ:日本税理士会連合会平成28年7月末現在)である。

税理士ひとりあたりでは相続税の申告は0.74人/年となる。1年間に1件も相続案件を担当していない税理士がいても不思議ではない。あなたの顧問税理士が相続に詳しいと過信しないことだ。

相続・贈与プランは争族を防ぐ「個人資産の決算書」

相続・贈与プランを作らないことは「相続手続きの意思決定の先送り」であるといえる。自分の死亡後のことを考えることは誰もが回避したい事柄なのだが、富裕層には残された家族ができるだけ争いを起こさないという目的で、「自分自身の個人資産の決算書」としての相続・遺言プランを準備することを強く勧めたい。

※本内容は一般的な考え方を示したものであり、本件の実行に関して当社は一切の責任を持ちません。実際にプランを行う場合には税務の専門家にご相談下さい。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)

RIAJAPAN おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。

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