「子ども名義の通帳だから大丈夫」の落とし穴

名義は子どもでも、次の事例は名義預金と判断され課税遺産額に加えられる結果となるリスクがある。「印鑑は親が親名義の通帳に使っているものと同じ」「通帳の保管は親が行っている」「子どもが銀行名、支店名を知らない」

コツ(5)通帳は自署で印鑑は子ども専用、名前入りを

金融機関の通帳を作る際も、可能ならば子ども自身に記載させた方が良い。すでに親が口座開設時に印鑑届を代筆した経緯がある場合は、改めて子ども自身が自分の筆跡で印鑑届を再提出してから贈与手続きを行う方がベターであろう。印鑑は親が利用しているものを兼用しない。

新たに苗字でない「子どもの下の名前」まで入った印鑑の方が誤解を受けずに贈与を成功させる可能性が高いと思う。子どもが女性の場合に結婚で苗字が変わることを想定して「下の名前のみ」の印鑑の使用もコツのひとつだ。

贈与契約書を作成し子どもに保管させる。贈与契約書の所在を子どもが知らない場合を避けるためだ。子ども名義の通帳を作り保管は子ども自身が行う。親名義から子ども名義の通帳への振込実施しオフィシャルな贈与日付の証拠を残す。贈与の申告書も子ども自身が自分の印鑑を押印し保管した方が良いだろう。贈与税の納付手続きも子ども自身で行わせることは金融経済教育の観点からも意義があると思う。

※本内容は一般的な考え方を示したものであり、本件の実行に関して当社は一切の責任を持ちません。実際にプランを行う場合には税務の専門家にご相談下さい。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN(http://ria-japan.co.jp/)おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。

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