2.事情があって働けないパートナーがいる家庭には厳しい税制に

1.では夫婦控除導入によるメリットを書いたが、デメリットもある。それは、事情があって、夫婦のいずれかが働けない世帯の家計には打撃になるという点だ。

夫婦控除の制度は「夫婦元気で共働きで仕事に対して意欲がある」状態が前提だ。ということは、夫婦のどちらかが妊娠・出産前後や育児、親の介護や自分自身の病気などで働けない世帯にとっては、事情いかんにかかわらず、年間38万円の所得控除がまるまるなくなってしまうのだ。

所得税の配偶者控除だけでなく住民税の配偶者控除も考慮すると、500万円以下の世帯では、38万円×10%(所得税分)+33万円×10%(住民税分)=7万1000円、年間の手取りが減ることになる。月換算すれば6000円ずつ家計から出ていく計算だ。事情のある家庭はたいてい、その事情にからむ出費が多いものだ。そういう世帯にとっては、月6000円の出費は決して安いものではない。

働けない事情のある世帯にしかるべき考慮を

夫婦控除の導入は、働く意欲のある世帯には、追い風になるに違いない。問題は、「いかに事情をかかえている世帯に対して配慮をしていくか」だ。これについては、税制だけでカバーしていくのはとても難しい。

人員が少なく、財政がひっ迫している中ですべてを配慮することは難しい事ではあるけれど、これを放置しておくと、金銭の不安が自殺やうつ病、殺人事件の多発を招く結果になりかねない。税制改正と同時に、社会保障手当の充実や行政面でのサポートなどを考えていくことが必要である。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ」

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