日本の投資アドバイザーは投資家の利益を最大化出来ない?
日本の多くの金融機関は投資家に商品を勧め、「委託手数料」を受領している。投資信託を例に挙げれば、運用開始時の「販売手数料」、保有期間中の「信託報酬」を投信販売会社から委託手数料として受け取っているわけだ。
伝統的な日本の投資アドバイザーは、投資家の利益を最大化することよりも、自身の営業成績が上がることに注意が向いても不思議ではない。アドバイザーの収入の源泉が会社であれば、会社の利益を増加させる働きが評価に繋がることに経済合理性がある。会社の利益も営業員等の利益も「高い手数料」を得る方向性だ。アドバイザーが熱意を持つのは、成績を上げてボーナスを増やすことだ。結果としてこんな事柄がおこるのは必然と言えるだろう。
その投資アドバイザーは自分自身の投資では採用しない商品を勧めたとしても、結果として投資商品の高いコストが運用成績を押し下げても気にしない場合も考えられる。将来、顧客が苦情を言う事態が発生しても、その時には自分は担当者ではないかもしれない。数年経てば転勤してしまうのだから。
FP、IFA、RIAは売り手側、買い手側?
金融商品に投資する際のアドバイザーとして転勤がない3つの業態について考えてみる。
1.FP:投資家は「脱法行為の可能性」の認識を
FP(Financial Planner)で金融商品のアドバイザーを名乗っている者は脱法行為を行っている可能性が高い。FP資格単体で報酬を得て、金融商品のアドバイスを行うことはできない。金融商品取引業の「投資助言・代理業」の登録が必要である。
そして正規に投資助言業を取得していない者は「投資アドバイザー」などと投資家を惑わす表現を使う。仮に「金融商品の手数料を受け取っていないから中立」としても、違法性が緩和される訳ではない。あなたの大事な資産のアドバイスを任せて大丈夫かどうかを再考する必要がある。FPで金融商品のアドバイスを行う者は、消費者保護目線に立ち、金融商品取引法を熟知し、適法に投資助言登録を受けて投資家のために働くべきだ。
2.IFA:志の高いIFAは投資家にとってメリットがある。
米国では非伝統チャネルである、「銀行」、「IFA」、「投資助言業業者」が個人投資家の拡大に寄与してきた事実がある。
IFA(独立系フィナンシャル・アドバイザー Independent Financial Adviser)には、伝統的な証券会社の高いノルマを嫌って転職してきた者も多い。
投資家にメリットのある、志が高いIFAの要件は以下と考える。
・顧客に高い手数料を払わせたくないと考えている
・勉強熱心で金融商品のコストに敏感である
・自分の利益よりも顧客の利益を優先する
・顧客と長期に取引をしたいと思っている
・IFAに転勤がないことで親身な対応ができると考えている
しかし、IFAの主要な収入源はコミッション収入であることも投資家は理解すべきである。投資家が株式の売買や投資信託の買付けを行う際に発生するコミッション収入がIFAの収入を高くすることも事実なのだ。
IFAは金融商品仲介業者であり、証券関連の手数料を受取る売り手側である。またIFAが投資助言業を兼務や関連会社で持つことは、中立性に反する可能性がある。頻繁な売買を助言した場合、関連のIFAの手数料が上昇するのは不適切だからだ。
3.RIA:投資家と利益相反が少なく「買い手側」
RIA(投資助言業者 Registered Investment Adviser)は金融商品取引業(投資助言・代理業)の内閣総理大臣登録の投資を受けた者で、販売や売買手数料を受取らない。顧客から投資助言報酬を受け取る。収入の源泉は契約者である投資家からだ。
顧客と契約した残高に一定の報酬率をかける「契約残高連動方式」は米国ではRIAの95%が採用している。投資家の資産残高に比例して収入が増えるため、投資家の資産が増えるアドバイスが優先事項となる。すなわち投資家との利益相反が極小化されている。米国では資家の資産形成に役立っており、投資家とRIAはWIN-WINの関係が成り立っている。
ただし問題もある。RIAは米国では2万6000以上あり認知されているが、日本の投資助言・代理業者ではケタ違いに少なく、わずか998しかない(2016/07/31現在)。しかも証券会社やファンドが重複して投資助言・代理業の登録を受けている場合が多い。買い手側「投資助言・代理業」専業のRIAは極めて少ない。またその全てが営業しているとも限らない。投資家に必要なジャンルの専門家であるかどうかもわからない。外貨ベースの投資ニーズに、国内株のRIAは専門外だ。どのくらい数が少ないかといえば、例えば北海道と東北の財務局管轄の合計で専業の投資助言・代理業者はわずか6社といった具合だ。買い手側「投資助言・代理業者」との出会いは現在の日本では極めて労力を要することなのかもしれない。
あなたのアドバイザーを選定するひとつの基準として、その収入の源泉を考え、「売り手側」「買い手側」を判断してみてはいかがだろうか。
安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN
おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。
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