民泊,Airbnb,規制緩和,旅館業法,インバウンド
(写真=PIXTA)

自宅やマンションの空き部屋など一般住宅を宿泊施設として有料で貸し出す「民泊」について厚生労働省は10月、全国の約1万5000件の民泊物件を対象にした初の全国調査に乗り出すと報じられた。

2015年の訪日客数は東京五輪が開催される2020年の時を目標とする2000万人に近づく水準に達しており、政府は目標を20年に現在の倍の4000万人、30年には3倍の6000万人まで増やすという。さらに4年後の東京オリンピック・パラリンピックに向け増加が見込まれることから、民泊は訪日外国人への宿泊施設不足の対策として期待されている。

その受け皿となる民泊サービスで、貸し出しが認められていない物件での営業が横行し住民とのトラブルも相次いでいる。そこで厚労省は物件情報をリスト化し、対策の検討や行政指導などに生かそうと考えいると見られる。

調査は仲介サイトの情報を元に、保健所のある都道府県や政令市など全国142自治体で、各100件以上の物件を抽出して行われる見込みだ。

民泊の問題点

「民泊」は既に世界中で支持されている。米国発の民泊サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」(本社・米サンフランシスコ)はもはや聞いたことがないという人はいないだろう。世界190カ国以上、約200万件が施設として登録されていると言われている。ちなみに日本では約18000件あるそうだ。

民泊をめぐっては様々な問題が指摘されている。旅館業法上の無許可営業をはじめ、土地利用規制違反・納税逃れ・安全・衛生管理上の問題・既存宿泊業者との公正競争の確保をめぐる問題などだ。

マンションの資産価値の毀損や所有者に無断で行われている賃貸マンションの転貸問題、あるいは他人名義の宿泊による不法滞在の問題など様々な問題や懸念が指摘されているのだ。近隣住民にとのトラブルや生活安全上の不安やゴミや騒音のトラブルなどもある。

住民の生活環境に悪影響をもたらしている例があることから、マンションの管理規約に「民泊禁止」の条項を設けようとの動きもある。

早急な民泊のルール作りの必要性

厚労省が苦肉の策として出した通達では、「年1回(2~3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの」は、「イベント民泊」とされ旅館業法の適用は受けないとなっている。

農林水産業者の運営する施設に宿泊する「農家民泊」は、旅館業法の適用は受けるが面積基準の要件が緩和され建築基準法や消防法が特例扱いされている。このように旅館業法の適用基準といった法整備に追いつけないのが現状なので現場処理的な対応になっているのである。

旅館業の許可は、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4つに分類されていて、それぞれに客室の床面積・客室数・玄関帳場(フロント設備)といった施設の基準が施行令や各地域の条例によって細かく定められ違反すれば「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金とされているのだ。

その他にもさまざまな懸念の声がある。無許可民泊に規制をしておかなければ、感染症のリスクが高まる、防火対策の不徹底から火災の危険性がある、テロや薬物犯罪の温床となる‐‐といったものだ。

新しく生まれたビジネスを規制でおさえつけるやり方が通用した時代は終わっている。既得権益に配慮して「とにかく規制を」ではなく、利用者をしっかり保護しながらも、新たなビジネスチャンスの芽をつまないという観点からの対策が求められている。(ZUU online 編集部)

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