元本保証といえば、一般的に思い浮かべるのが「普通預金」や「定期預金」などである。ここで考えていただきたいのが、「元本保証とはそもそも何なのか」ということだ。本当に意味するところを知らずに、ただ言葉だけにつられていないだろうか。これらが本当に元本保証されているのかどうかを見てみることにしょう。

一般に、預金には預金保険機構によるペイオフ制度が存在しており、万一、お金を預けている銀行が破綻すれば、預金は保護されることになっている。だが、ペイオフには1金融機関あたり、預金者ひとり1000万円とその利子までという限度額がある。ゆうちょ銀行は2016年の4月から1300万円まで預金を預けられるようにしたが、それでもペイオフの対象が1000万円までであることには変わりがない。しかも、外貨預金は「預金」という名前が付いていてもペイオフの対象とはならないので、注意する必要がある。

預金が100%安全とは限らない

ここまで聞いて「自分は銀行に1000万円以下しか預けていないから大丈夫」と思っても、安心するのはまだ早い。仮にペイオフの対象内であったとしても、「ペイオフ自体が、果たしてどこまで機能するのか」という疑問が残る。

ペイオフは、2010年9月に日本振興銀行が破綻した際に、正常に機能したという実績がある。しかし、もしメガバンクが1行でも破綻した場合、おそらくペイオフは機能しない。メガバンクは規模が大きすぎるため、預金保険機構がどこまで保障できるのかは定かでなく、またそのような事態になれば、他の銀行の預金者も一斉に預金の引き出しを行って、混乱のるつぼと化すに違いない。

これが現実に起こるかどうかは別にして、「銀行に預金しておくことが、100%安全とは限らない」という事実を、利用者は認識しておくべきである。

お金は、実際は「目減り」している

実は、ペイオフよりももっと身近な脅威が存在している。物価上昇による「預金の目減り」である。預金通帳に通帳残高を印字してみても、数字的には何も変わらないのだが、実際はお金の価値は常に動いている。

「為替」を思い浮かべればわかりやすいと思う。同じ1ドルが、100円になったり120円になったりしているのだから、為替と共に価値が変動しているのは明らかである。

人が生産活動を行い、経済が成長していけば、物価は緩やかに上昇していく。ものの価値が上がるということは、相対的にお金の価値は下がっていくことを意味する。政府の物価上昇の目標値は2%。換言すれば、その目標が叶えばお金の額面はそのままでも価値は2%減ってしまうということだ。お金も置いておくだけでは、価値を保ち続けることは難しいのである。

本当に「安全」でなければどうするか?

筆者がこの文章を通じてもっとも伝えたいのは、「元本保証などこの世には存在しない」ということだ。お金は動かさない限り、増えるどころか減っていくという認識を持つことが大切である。今後はそれを念頭に、どうやって自分の資産を維持し、さらに増やしていくのかを考えていただきたい。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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