ジェネリック医薬品ならぬジェネリック「農薬」を普及させるため、農林水産省は2017年度からの登録手続きを簡素化する方針を明らかにした。
これにより安価なジェネリック農薬を開発、流通させ、農家の収益拡大につながると期待されている。
日本は韓国より殺虫剤が2割、除草剤は5割高い
農薬の開発は十数年の歳月がかかるといわれ、開発費用も相当かかる。例えばコメ向けの農薬を農水省に登録するとなれば、安全試験などに120億〜130億円かかるとされている。開発された農薬は特許制度で守られ、この特許には有効期間があり出願から20年(原則)で効力が無くなる。
特許が切れたら、第三者でも安全性試験などで登録に必要なデータを取り揃えれば、製造販売できる。オリジナルの農薬より開発費は抑えられるから、市販される価格も引き下げられる。このあたりは医薬品と同じだ。
農薬の製造・販売は、安全性確認のため農薬取締法に基づく登録が義務付けられている。日本で登録されているジェネリック農薬は 67 件(有効成分4種類)(2016 年1月現在)となっているが、これは全登録農薬の2%にも満たないという。なかなか普及しない理由として指摘されているのは、規制が厳しく安全性試験などに費用がかかることだ。ちなみに韓国では、登録農薬数のうち3割程度をジェネリックが占める。
政府・自民党も農業改革を成長戦略の柱としている。JAグループに対して資材価格の引き下げを求めており、その要請に応じる格好でJA全農(全国農業協同組合連合会)は2020年にもジェネリック農薬を発売するという。
JA全農は1994年から2割ほど安いジェネリック農薬を発売しているが、登録コストがかさむことなどから、販売したのは計2商品に過ぎなかった。
TPP発行で農家は打撃を受ける
しかしTPP(環太平洋経済連携協定)が発効すれば、割高な資材を仕入れる日本の農家は打撃を受けかねない。このため政府の規制改革会議や自民党も、農薬を含む生産資材の価格引き下げを求め、今秋にも構造改革案をまとめると見られている。JA全農が2020年までの発売方針を打ち出した背景には、こうした流れがあるとみて間違いない。
メーカーでつくる農薬工業会からは、多額の費用と労力を掛けて作った新薬情報を安易に後発メーカーに開示するには抵抗がある。しかし特許や著作権の期限が設定されていることから考えれば、そもそもそうした抵抗は無理筋だ。また時代のすう勢からしても、ジェネリック農薬シフトの流れを止めることは難しいだろう。(ZUU online 編集部)
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