中小企業,企業経営,経営力向上計画
(写真=PIXTA)

アベノミクスは日銀のマイナス金利政策導入以降、正念場を迎えている。大胆な金融政策・機動的な財政政策の後に来る「民間投資を喚起する成長戦略」という3本目の矢の実現がアベノミクス成功を左右し、安倍政権自身の長期政権実現への試金石となる。

実は、この民間投資を喚起する成長戦略実現のために重要な中小企業政策が、今年の7月より始まっている。中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定制度である。

中小企業等経営強化法とは、政府が中小企業等に生産性向上の取組の指針を提示し、そのような取組を行う企業を積極的に支援するものだ。この法律に基づく「経営力向上計画」の認定を受けると、税制及び金融支援の面で優遇を受けることができる。政府はこの法律に基づき、今後のあるべき中小企業の姿を示しているとも言える。

そしてこの認定制度は、中小企業を取り巻く現状と課題に対し、生産性を高めるものとして期待されている。

経常利益が過去最高水準? 中小企業の現状

中小企業全体の現況はどうなのだろうか?昨年、中小企業の経常利益は過去最高水準となった。

しかしながら、売上高は伸び悩んでおり、経常利益の増加は、人件費の抑制とコスト削減の結果が大きいと言える。中小企業にとって、現在問題となっているのが、人手不足や設備の老朽化、労働者・経営者の高齢化であると考えられている。特に、地方企業においてこの傾向は顕著になりつつある。

ただ中小企業の中でも、生産性において高い生産性を実現している企業とそうでない企業に分かれつつあるのが現状だ。高い生産性を実現している企業の特徴として、次の特徴が挙げられる。

(1) 設備投資やIT投資に積極的
(2) 一人あたりの賃金が高い
(3) 適度な借り入れや出資を受け、資金調達が充実
(4) 顧客ターゲットが明確かつ柔軟
(5) 早期の事業承継を実施し、経営層の世代交代を実施

反対に、生産性の低い企業の特徴として、以下の特徴が挙げられる。

(A) 設備投資には消極的もしくは計画的でない
(B) 売上規模と賃金のバランスが取れていない
(C) 過度な借入状況
(D) 顧客ターゲットが旧態依然もしくは硬直的
(E) 企業全体の世代交代がなされていない

経営力向上計画とは? 経営者が自分で作るべき理由

このような、生産性における特徴が挙げられるが、先ほどの中小企業等経営強化法は、生産性の高い中小企業の特徴を分析し、その実現を目的として作られている法律である。

その基本方針や事業分野別指針に沿った内容の経営力向上計画を策定し、認定がなされると、対象の固定資産税の軽減や申請すれば金融支援が受けられるという仕組みである。

経営力向上計画は、記載する内容として「自社の事業概要」「自社の現状認識」「経営効率化の方法、見通し」「投資予定の設備、資金調達方法」——を記載して、自社の事業の関係省庁へ申請する。

認定を受けると、価格160万円以上の新品である機械装置など(金属加工機や複合プレス機など)が、生産性が年平均1%以上向上するなどの用件を満たせば、3年間固定資産税が半額になるほか、申請により金融支援等(信用保証協会による信用保証の枠の拡大、独立行政法人中小企業基盤整備機構の債務保証等)も受けられる。

実際に申請する場合には、取引銀行や商工会議所等の認定支援機関にまず相談するのがベストである。ただし決して丸投げせず、まずは経営者自身が計画のベースを作ったほうがいいだろう。

なぜ経営者自身がまずは作ることを勧めるか。この計画を作ることで、自社の強み弱み・会社の問題点や課題・今後のポジション・将来の会社の在り方を考え、向き合ってほしいからである。今後、中小企業を取り巻く環境は、少子高齢化やTPPの進展等でますます厳しくなることも予想される。しかしながら、イノベーションを実現することで、海外需要の取り込みや地方創生分野などチャンスは広がるという面もある。つまりは、経営者自身が課題を認識し、先手を打って行動していくことが必要である。そのきっかけとなる経営力向上計画をぜひ活用することをお勧めする。

ちなみに中小企業庁はこの経営力向上計画の認定を、今後の国の中小企業施策のパスポート的存在として考えているとのことである。

国としても、これを機に若い経営者の方々に、正々堂々と「稼ぐ」ことについて改めて考えてもらうことを期待している。国も本気であり、経営者のみならず、この中小企業を取り巻く政策の変化については、全てのビジネスパーソンも知っておいた方がよいのではと思われる。(ZUU online 編集部)

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