JPモルガン・チェースが中国の共同証券事業の売却協議にはいったことが、提携先であるファースト・キャピタル・セキュリティーの発表から明らかになった。

交渉が成立すれば33%の保有株をファースト・キャピタルに引きわたすことになる。しかしこれは中国からの撤退を意図した動きではなく、むしろ経営面でより大きな権限をにぎれる新たな提携先を中国本土で確保することで、事業拡大を狙った方向転換のようだ。

HSBCが初の経営権獲得に成功 外資系銀行の反乱があとに続くか?

JPモルガンは2010年、欧米の銀行にとっては狭き門である中国本土での証券引き受け事業承認を取得。2004年に米銀行初の中国証券事業進出を果たしたゴールドマン・サックスに次ぐ第2の米銀行として、ファースト・キャピタルと共同事業に乗りだした。

しかし経営の権限はあくまで中国側の手中にあり、少数株主のJPモルガンはお飾り的存在でしかなかったようだ。そうした状況に業を煮やし今回の売却交渉に踏みきったことなどが、内部の事情に詳しい関係者の話から判明している。

同じような不満を抱いているのはJPモルガンだけではないはずだ。海外企業が中国本土の金融資本市場に進出する際、中国企業との共同設立が絶対条件となる。そのためゴールドマン、モルガン・スタンレー、クレディ・スイスなど、国際大手がこぞって中企業と提携関係を結び中国市場に参入しているものの、あくまで実権は中国側におさまり、思うように身動きがとれないという問題が横たわっている。

JPモルガンの場合、引き受け業務を請け負うことは可能だが、販売や取引きはファースト・キャピタルのみが請け負えるということになる。

しかし昨年11月、HSBCホールディングスが51%の株を保有し、経営権を手中におさめるかたちで深セン前海(Shenzhen Qianhai)ファイナンシャル・ホールディングスとの共同証券事業許可を取得したことで、「郷にはいれば郷にしたがえ」といった従来の半ば諦めに近い流れに変化の兆しが見え始めた。

HSBCの前例を目の当たりにしたJPモルガンがファースト・キャピタルとの関係を清算し、経営権をにぎれる新パートナーを物色してもけっしておかしくはないわけだ。こうした流れをくみとり、ほかの大手が同様の動きを見せることも十分に考えられるだろう。(ZUU online 編集部)

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