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(写真=PIXTA)

日本郵便とゆうちょ銀行(日本郵政グループ)は保険商品の販売手数料を開示する検討に入った。考えて見れば当たり前で、今さら感もあるが、報道によると、メガバンクや地銀も10月から開示する方向だという。なぜ今こうした動きが生まれているのだろうか。

銀行窓販の保険販売の重みが増している

開示の理由は、金融庁が以前から不透明さを問題視していたことだ。日本郵便とゆうちょ銀行では、全国約1000カ所の郵便局と、約200カ所のゆうちょ銀行直営店では顧客との取引の透明性を高めることになる。

メガバンクや地銀でも生命保険を販売する時には、例えば外貨建て保険や変額年金の販売に伴う手数料を顧客に配るパンフレットに明記したり窓販業務の際には行員が説明したりすることになる。各支店窓口で直接問い合わせることで商品別の手数料開示の説明はされているようだ。

銀行は保険販売の見返りに保険会社から実績に応じて手数料を受け取っている。金融庁によれば、銀行が窓販で得た手数料のうち、平準払いと一時払いの生命保険商品の割合は2015年上半期が計41%となっていて、12年度の31%から急上昇している。

投資信託を見ると同じ期間では62%から53%へ落ち込んでいる状況。銀行窓口の保険販売の重みが増している事が分かる。

中でも利回りが期待できる外貨建て保険の販売はここ数年伸びている。2016年7月6日に金融庁が示した資料では、外貨建て保険の手数料は平均7%弱に対し投資信託(約2%)より高くなっている。

マイナス金利政策で利ざやが縮む中、生保の窓販業務は銀行側に取ってはドル箱の一つだ。このため、手数料開示は保険窓販の手数料引き下げにつながると頭を痛めているようだ。

割高な手数料で契約者が減る恐れを懸念

業界関係者によれば、銀行側に入る円建て保険の販売手数料は契約額の2~3%程度だそうだ。

しかし外貨建てや変額年金は4~7%程度と高めに設定されているし、これは投信の販売手数料を大きく上回っている。商品によっては10%程度の販売手数料もあるそうで、実態はベールに覆われていた。

銀行窓販市場は約5兆3000億円と言われる。外貨建て保険と変額年金の販売額は約1兆8000億円。全体の3分の1を占めるその存在感は大きい。保険会社にすれば「お得意様」である銀行の不安心理を心配している。「情報開示手数料」で保険会社も銀行側も販売が萎縮し市場が冷えるのではと予想されるからだ。

開示となれば営業戦略の見直しは避けられないだろう。あるいは今後は手数料の値下げ競争も誘発しかねないかもしれない。国民目線からは良い話ではあるが、日銀のマイナス金利政策による運用難に続く中で、収益に影響しかねないこの話題は、業界側には頭が痛いところかもしれない。

生保大手4社中3社が増収

生命保険大手4社の2015年4月から12月期の業績を見ると、貯蓄型保険の販売が伸びている。売上高に相当する保険料等収入を見ると、明治安田以外の3社は増収だ。

日本生命を見ると、外貨建て保険などの販売が伸び、保険料等収入が前年同期比16.9%増の4兆3038億円。基礎利益も16.0%増の5103億円となっている。第一生命は子会社化した米生保の収益が寄与したことから、保険料等収入が5.6%増、4兆1663億円で基礎利益も22.7%増の4192億円となっている。
住友は保険料等収入14.7%増の2兆1738億円だった。とはいえ、変額年金の支払いで準備金の積み増しが影響したせいか、基礎利益は13.2%減の2399億円となっている。

そして明治安田では長期金利の低下を受けたせいで銀行窓販の保険販売を抑制し、保険料等収入が1.5%減の2兆5287億円だった(基礎利益では1.3%増の3391億円)。

地銀は大手行に追随するのか?

大手銀行が自主的に公開に踏み切るこの状況は、地銀にとっては悩ましいところだろう。

大手銀行は、マイナス金利の影響を受けたとはいえ、海外にも展開し収益を上げる体制にシフトしている。一方の地銀は地域経済の低迷で本業の貸し出しによる収益が頭打ち状態だ。変額年金保険といった手数料が収益の一定程度支えている。

飛躍して考えるなら、金融庁は地銀が大手行に追随すると読んでいて、それが地銀の再編につながると考えているのかもしれない。手数料公開についての各金融機関の動向には、まだ目が離せない。(ZUU online 編集部)

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