中国の「国家級新区」とは、大都市の新市街に対して設定された、一定の独立性と完結性を持たせた開発区のことである。

200以上ある「国家級開発区」より格上で、設立には国務院の批准を必要とする。最初の国家級新区は1992年に設立批准された上海浦東新区であった。何もない漁村から、摩天楼の林立する中国経済の象徴へ大変ぼうを遂げ、国家級新区成功の象徴となった。

しかし実はこの浦東以外はあまりパッとしなかった。ところが2014年以降、新規の批准を乱発し始めた。景気対策の一環に間違いない。その現状はどうなっているのだろうか。

上海浦東新区という象徴

2つめ国家級新区は、2006年批准の天津濱海新区である。昨年8月、大爆発事故を起こし有名になった。事故によりあまりうまくいっていなかった事情まで暴露され、二重の不幸になった。

その後2010~12年に、重慶両江新区、浙江舟山群島、甘粛蘭州新区、広州南沙新区、を批准、2014年から急にピッチが上がる。同年に陝西西咸新区、貴州貴安新区、青島西海岸新区が設立され9地区に。それ以降さらに設立が相次ぎ、現在は17地区を数える。完全な乱立状態である。

国家級とは名ばかりになり、地域経済の起爆剤として期待されている。自由裁量権を与えることで、投資誘引に励んでもらうのだ。あちこちの国家級新区が口を開けて金が落ちてくるのを待っている。ここでは第9番目の国家級新区、青島西海岸新区の例を見てみよう。

海洋と映画を看板に

青島市はもともと風光明媚な沿岸の観光地で、大貿易港もある。そこで海洋のイメージを膨らませること、さらに映画産業を付加して、これらを2枚看板とすることにした。

海洋産業では、海洋科技自主創新区、深海開発戦略保障基地、海洋経済国際合作先導区などを設立し、海洋研究、海洋産業発展の世界的先頭に立つ。

映画産業では「東方影視の都」をスローガンとし、世界最大級の映画スタジオを建設し、世界中の映画撮影隊を誘致する。先週には、世界映画産業のリーダーを目指す大連万達集団の王健林会長が、ロサンゼルスにおいて、青島西海岸新区での映画製作をアピールした。強力な援護である。

また増加するであろうビジネス客、観光客のため、6つの世界的ホテルチェーンのホテル建設も決まった。投資が投資を呼んだ。

批准1年後の2015年は、GDP伸び率△12.0%、財政収入△12.8%、固定資産投資は△15,8%と順調なスタートを切った。

一方で、脱貧困の物語も報道されている。

脱貧困も達成

西海岸新区は人口160万人、面積は2127平方キロである。農村地区も多い。そのうち省政府により「貧困村」に指定された5村のうちの1村は政策が功を奏し、全村をあげて貧困を脱した。その村は283戸、人口483人。全戸が地方政府により、貧困家庭に認定されていた。

地方政府の貧困担当者は、貧困を3つに分類し、それぞれ実効性のある対策を採った。

(1) 先天型貧困戸
(2) 孤寡型貧困戸
(3) 労力型貧困戸

それぞれ(1)は最低生活ラインまで社会保障を底上げ。(2)は清掃人、防火人、森林保護員などの行政サービスを結合した見守り作戦。(3)は手工業、小商業、のために技能訓練を無償で実施--などの対策を講じた結果、脱貧困を達成した。

しかし実際のところは企業を誘致したのである。薬材会社に荒地を提供し、始まった薬原料の栽培が雇用を生んだ。発電会社にも土地を提供、地代が入るようになった。これらを原資に1~3の施策を行った。

「国家級新区となったメリットは夢に終わらせません。貧困対策も充実し、実際このような脱貧困村も現れました。地方政府を信じ、豊かな未来を信じましょう」というアピールである。

新区の成否は、構造調整による失業をどれだけ吸収できるか、にかかっている。事業の内容は目新しくても、公共投資による成長モデルから抜け出せているわけではない。夢物語の多い分、かえって危険は大きいのではないだろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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