米スタンフォード大学の経済学部で教鞭をとるマイケル・ボスキン教授が、「大胆な金融政策改革が実施されないかぎり、経済危機は回避できない」との警告を発した。

前回の世界経済危機から9年。各国の政府が緊急手段投じた金融刺激策がいまではすっかり定番化し、多くの国が低金利やマイナス金利の導入に走った結果、世界中が抱えきれないほどの不安点要素で満たされている。ここに来て次なる経済危機の警鐘が、あちらこちらで鳴り始めた。

ボスキン教授「低金利はあくまで応急処置の効果しかなさない」

ボスキン教授は広く報道されている各国の経済・政治情勢に加え、財政政策の影響に関する数々のレポートを分析し、現在の世界経済が過去に例をみないレベルで緊迫していることへの懸念を改めて示した。

思い当たるところだけでも、欧州ではドイツ銀行やモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行が崩壊の危機に直面しているほか、中国では不動産バブル巨大化し、公債も民間債も史上最高額に達している。欧米の政情不安もそれらの不安要因に拍車をかける。

経済危機は突然訪れる。兆候を察知できるようで、実際にはできたためしがない。それゆえに過去4回の経済危機が世界に襲いかかったのだ。人間には危険を察知する本能が備わっているが、常に回避する能力と連動しているわけではない。「まさか」「もう少しぐらいは大丈夫」とタカをくくっているうちに、後戻りできない深みにはまりこみ、気づいた時には手遅れというのが、これまでの経済危機のパターンだ。

ボスキン教授は低金利政策が「あくまで応急処置として慎重に投じられた場合にのみ、長期的な恩恵をもたらす」こと、歳出の乗数効果(一定の条件下で有効需要を増加させた場合、国民所得が増加額をはるかに上回る現象)が持続するのは短期間に集中しており、1年も経過しないうちに勢いが色あせ始めることなどを、過去のデータから弾きだしている。

問題はこれだけではない。経済成長が失速しているにも関わらず、移転支出(生活保護・年金・補助金などの振替)は膨らむ一方だ。バラク・オバマ大統領の元でチーフ・エコノミストを務めたクリスティーナ・ロマー氏と、カリフォルニア大学の政治経済学教授、デヴィッド・ロマー氏のレポートでも、「例え景気刺激策の一環として移転支出(生活保護・年金・補助金などの振替)を引きあげたとしても、ごく短期間の効果しかあげない」と指摘されている。

現在のように世界中のあちらこちらで金利が低下したが最後、効果よりも副作用が顔をだし始めたのは当然の流れだろう。ボスキン教授は「景気刺激策の導入には、経済リスクと長期的なコストを念頭に置くことが必須である」とし、各国の中央銀行が歳出の増大を最小限にとどめながら慎重に方向転換を図っていかない限り、財政再建は不成功に終わるとの懸念を示している。(ZUU online 編集部)

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