ドローン,地方創生,地域振興,自治体
(写真=Thinkstock/Getty Images)

「空の産業革命」ともいわれ、注目を集めるドローン。民間企業がさまざまな活用方法を示し、国家戦略特区で実証実験が進む中、地方自治体でも導入に踏み切るところが増えてきた。活用方法も物資輸送や空撮、行方不明者の捜索、インフラ点検など幅広く、ドローンパイロットの本格的な育成に乗り出すところも出ている。

過疎地域や離島の生活支援が図れるほか、事務作業の効率化が可能になるなど、ドローン利用が自治体にもたらす恩恵は少なくない。まさに今年は自治体にとって「ドローン活用元年」といった様相を示している。

森林のモニタリングや行方不明者の捜索に活用

他の自治体に比べ、ひと足早くドローンの導入に踏み切ったのが岡山県真庭市だ。市は林業にICT(情報通信技術)を活用する「スマート林業」の一環として、2013年度にドローンを導入した。

市は鳥取県と県境に位置する中国山地にあり、岡山県でも指折りの林業地帯として古くから知られている。今も市域の約8割が森林。しかし、長引く林業不振から森林産業の再生が急務となり、ICTを活用して効率的な林業を進めようと考えた。

市役所と森林組合をネット回線でつなぎ、森林資源情報の共有化を図る「森林林業クラウド」を構築した。その中でドローンは森林を空撮し、森林資源のモニタリングに活用されている。その結果、バイオマス発電に利用する林地残材や間伐材の収集が効率化された。

真庭市林業・バイオマス産業課は「現地まで出かけ、何時間もかけて確認していた森林のデータが、ドローンとICTを活用すれば一瞬で終わる。市役所内の作業効率も大幅に向上した」と喜んでいる。

香川県観音寺市もドローン活用で先進地の1つに数えられる。2015年9月には民間企業と協力して全国に先駆け、市沖約10キロの瀬戸内海に浮かぶ伊吹島に向け、医療物資を配送する実証実験を進めた。

香川県沖の瀬戸内海には大小24の有人島があり、島民の減少と高齢化が進む中、物資搬送が大きな課題に浮上してきた。伊吹島もそんな離島の1つで、約270世帯、600人足らずが暮らしている。この実験では海を越えたドローンが島の学校グラウンドにパラシュートで物資を無事に投下した。

2016年度に入ってからは消防隊の救助活動で発車銃の代わりにドローンを使い、ガイドロープを対岸に渡す実証実験を行ったほか、市内の山中で行方不明になった人の捜索にもドローンが出動した。

観音寺市危機管理課は「ドローンは物資搬送や人命救助など多方面に活用できる。今後、離島部の生活支援や防災、救助活動などに役立てていきたい」と力を込めた。

庄原市はパイロット養成事業を2月にスタート

ドローンの活用方法は多岐に渡るものの、ドローンを的確に操縦できるパイロットの数はまだ少ない。各自治体は大学や民間業者から操縦方法を学んでいるが、広島県庄原市は本格的なパイロット育成事業に乗り出す。

庄原市は水田への農薬散布に産業用ヘリコプターをチャーターしているものの、費用が高いうえ、山間部でヘリを飛ばせないところが一部にあるのが悩みの種になっていた。市はヘリの代わりにドローン活用を計画、それに合わせて市職員だけでなく市外の民間人も含めて幅広くパイロットを養成することにした。

講習会は2017年2、3月に予定し、講習を請け負う企業やドローンを飛ばせる講習場所の選定を進めている。同時に近く産官学の会議を設置し、ドローンの活用方法についても検討を重ねる計画だ。

庄原市いちばんづくり課は「せっかくドローンを導入しても使いこなさなければ意味がない。将来は農薬散布だけでなく、防災やインフラ点検などに幅広く活用していきたい」と意欲を見せている。

このほか静岡県焼津市は、ドローンによる防災航空隊「ブルー・シーガルズ」を発足させ、道路や港湾の調査、広報用写真の空撮などに利用を始めた。徳島県那賀町は、町役場内に全国初のドローン推進室を設置、宅配サービスなどの実証実験を進めている。

三重県伊賀市は購入したドローンを道路崩壊や土砂崩れなどの被害状況の把握や遺跡の発掘調査、観光PRに活用する考えを示した。宮城県気仙沼市も災害時の被害確認用にドローンを導入している。

国家戦略特区では、千葉県千葉市がドローンの宅配実現に向け、実証実験を進めたほか、広島県と愛媛県今治市は本州四国連絡橋など橋梁の保守点検に活用を計画する。秋田県仙北市は火山観測や野生動物の行動調査に利用を考えている。

ドローンは少し前まで自治体の行政担当者の間であまり知られていなかったが、この1年間で一気に浸透し、急速な広がりを見せている。

しかし、導入するだけでは意味がない。ドローンは単に作業を効率化させるだけでなく、人間の活動に3次元的な広がりをもたらす。どんな用途に活用し、地域の課題解決につなげるのか、自治体の知恵が問われている。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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