強かったエリアブランド力に陰り?

近年、作れば売れるといわれていた人気エリアにも異変が起きているようである。これまで、青田売りで完売が当たり前だった街の新築物件で売れ残りが出ている。売れ残っているマンションの中にはブランドマンションも多く含まれているそうだ。各社、売り抜くために値引きや特典をつけているようだが、その場凌ぎの戦術は価格下落の呼び水になりかねない。

株価低迷などによる経済情勢の不透明感で富裕層の需要が減退したこと、これまでの価格高騰により初めて住宅を購入する一次取得層の購入限度額に近づいていることが、売れ残りの背景にあるといわれている。

そういったマンション価格の下落は、東京オリンピックによる分譲価格の高騰を見越してマンション用地の取得争いをした代償だろう。

東京オリンピックがマンション市場に及ぼす影響とは

東京オリンピックの開催による経済効果は、さまざまな意味で大きなポテンシャルがある。マンション市場に与える影響として、まず消費者マインドの盛り上がりがある。要するに気分なのだが、これが経済に与える影響は大きい。

実際に、選手村や各種競技場が集中する湾岸エリアは人気が急上昇している。もちろん自らが居住するための部屋を探している人も少なくはないが、投資用マンションの購入を希望している人も多くいる。それがマンションの建設ラッシュに拍車をかけ、同時にマンションの価格高騰を招くことになる。

需要があれば価格が上がるのは経済の原則だが、販売可能な価格に上限があるのもまた原則である。この点を冷静に分析すれば、マーケットに見合った建設、販売計画がなされるはずである。しかし、湾岸エリアのマンション市場に陰りがみえている。後先考えずに作り過ぎたため供給過多となっているのだ。

以前から、東京オリンピック終了後にマンション価格が暴落するのではないかという懸念があった。それが既に暴落する兆候が現れているのだ。

とはいえ、違う側面からみればこれまでの異常な価格高騰が落ち着き、正常化してきているとも受け取れる。そうであるなら、今のマンション価格下落は暴落とは本質的に異なり、本来あるべき正常なマンション市場となるだろう。

購入可能な価格で供給されれば、マンション市場は安定した成長が期待できる。問題は、供給側がいかにしてマーケット事情を考慮した戦略を立てて生産調整をするかである。

デベロッパー側は高値で建設用地を取得しているので、利益を削る覚悟がいるだろう。場合によっては赤字になることもあるかもしれない。しかし、一時的に減収減益になったとしても、長期的には市場を安定させた方が得策だろう。