教育資金贈与制度の利用方法

教育資金の一括贈与制度利用のための専用口座の開設は、実際には銀行や信託銀行、一部の証券会社で扱っています。贈与を受ける人1人に対して、1つの金融機関、1つの営業所に限られており、途中で金融機関を変えることはできません。孫は未成年の場合には、親などが代理人となります。贈与する資金の預入は、1500万円の限度額以内であれば、追加できます。税務署への申告書等の提出は、金融機関を通して行われます。 教育資金贈与制度利用のための手続きには、贈与を受ける人の本人確認書類や印鑑、贈与を受ける人と贈与する人との関係を占めす戸籍謄本または住民票などが必要です。金融機関に用意された贈与契約書や教育資金非課税申告書にも記入を行います。

教育資金の払出し方法には、金融機関によって、「支払後払い方式」と「事前払い方式」があり、選べる場合もあります。「支払後払い方式」は、教育資金を立替払いした後、金融機関に領収書等を提出して、払出しを受けるものです。「事前払い方式」は、教育資金を支払う前に、金融機関から教育資金の払出しを受け、後日領収書等を提出します。立替払いのための現金の準備をする必要がありませんが、払出した金額を当年度中に教育資金を使い切る必要があります。金融機関によっては、払出したお金を戻すことも可能です。 口座開設料や口座管理手数料、払出し手数料の有無や金額は金融機関によって異なります。教育資金の払出しや領収書の提出といった手続きが、窓口へ行かずに郵送で済ませられる金融機関もあります。払出し方法と合わせて、利便性のよい金融機関を選択しましょう。


教育資金の一括贈与制度利用の注意点

教育資金の一括贈与制度では、贈与を受けた子や孫が30歳になった時点で、口座に資金が残っていると、贈与税の対象となります。教育資金以外を目的として、使用した分も課税対象です。贈与を受ける人の年齢をもとに、公立や私立などの進学コースを想定し、必要とされる教育資金を概算して、使用が見込める教育資金の範囲内での贈与にとどめるようにしましょう。

また、一度教育資金として贈与してしまうと、贈与した祖父母が払出すことはできません。老後には、生活資金だけではなく、多額の医療費や介護費用、老人ホームへの入居資金等が必要となることもあります。1500万円の非課税枠を使い切る必要はありませんので、老後の資金が足りずに路頭に迷うことがないよう、老後の資金が潤沢にあるか計算し、余裕資金の贈与にとどめるようにします。 教育資金の一括贈与に現金資産を使ってしまい、不動産の相続で相続税が発生すると、相続税の支払いのために、不動産を売却する必要がでることが考えられます。


家族間のトラブルの懸念

教育資金の一括贈与制度を利用することによって、家族や親族間でトラブルが起きることも考えられます。 子供や孫が複数人いる場合、一部の孫にのみ贈与を行なうと、子供や孫から不公平感を訴えられる可能性があります。長男の子供は社会人、次男の子供は中学生で、次男の子供しか対象とならないケースも考えられます。教育資金の贈与の仕方によっては、兄弟間の仲を悪くしてしまうことや祖父母が亡くなった後の相続争いの要因となることが想定されます。他の保有資産の相続を含めて、先を見据えた慎重な判断が必要です。一部の子の孫のみに、教育資金の一括贈与を行なう場合には、教育資金の贈与分を考慮した遺言書を作成するなど、将来に渡るトラブルを避ける配慮をしましょう。 また、教育資金の贈与制度は、贈与を受ける人1人に対して、1500万円が限度であり、贈与する人ごとに1500万円の枠があるわけではありません。一方の祖父母が1500万円を贈与してしまうと、他方の祖父母は制度を利用できなくなってしまいます。事前に子などを通して、制度利用の意志を確認しておくとよいでしょう。

心情的な問題では、孫への贈与を行なった場合、子や子の配偶子者には感謝されても、孫の年齢や性格によっては、孫本人には感謝されないことも考えられます。「孫の喜ぶ顔が見たい」との理由から教育資金を贈与しても、孫がさほど喜ばないケースもありますので、留意しておきましょう。 家族や親族間でのトラブルを避けるためには、教育資金贈与制度を利用する前に、家族や親族との関係性を見直して、必要に応じて相談しておくことが大切です。