脱「ワタミ」で客足アップ

電通 <4324> に勤務していた新入社員の過労自殺は、社会の大きな関心を集めたが、ワタミでも新入社員が過労を理由に自ら命を絶ち、同社は従業員に長時間労働を課す「ブラック企業」の代表格となり、「ワタミ」ブランドは失墜。会社のネガティブなイメージは深刻な客離れも引き起こし、売上げに大打撃となった。これまで社名を冠にした「和民」「わたみん家」が同社の事業をけん引してきたが、低価格居酒屋の需要の伸び悩みや負のイメージを払拭すべく業態転換に乗り出した。

事態奪回のために目を付けたのが、280円均一(税抜)の低価格の焼き鳥チェーン鳥貴族 <3193> の好調ぶりだ。そこで、ワタミも鶏肉に焦点を当てて業態転換を推し進める。居酒屋「和民」のうち32店舗を、みちのく清流若鶏の唐揚げを提供する「ミライザカ」へと衣替えさせた。また、「わたみん家」の44店舗を、自慢のタレで焼き上げる焼き鳥・串揚げ・もも一本焼きが看板メニューの「三代目 鳥メロ」に看板を取り換えた。転換した店舗は、売上高が前年比でミライザカが33.3%増、三代目 鳥メロが45.1%増とそれぞれ大幅に伸びた。

ネガティブなイメージがつきまとっていたワタミブランドの名前を看板から取り除き、脱「ワタミ」化を図った戦略は、ひとまずは好評のようだ。

通期見通しは変更せず

3期連続で営業赤字に陥った国内外食事業だが、既存店売上高は前年同期比で1.8%増、既存店客数も0.5%増と業績が回復傾向にあることを強調する。

しかし、直近の16年10月の実績は、ミライザカ・三代目 鳥メロがいずれも売上高・客数とも前年比で2ケタ以上の伸びを示しているのに対し、事業の中核を担う和民・わたみん家は売上高・客数ともに前年割れの状況が続いている。しかし、通期の業績予想は従来通り、売上高1000億、純利益2億円の見通しは変えておらず、年末の忘年会シーズンに向けてどこまで需要を喚起できるかにかかっている。

その忘年会の需要を取り込むべく客足が伸び悩む和民・わたみん家では、11月末まで予約を受け付ける早得キャンペーンを展開。和民では、全10品のコース料理と3時間飲み放題を3900円、わたみん家は、鶏料理と炭火焼堪能コースと3時間飲み放題を2999円(いずれも税込)の特別メニューを提供する。

脱ワタミ化で好調をつづけるミライザカ・三代目 鳥メロを横目に、これまでワタミをリードしてきた2つの居酒屋店舗がどこまで顧客を引き付けることができるか。店舗の売上アップなど明るい兆候が見え始めたワタミだが、かつての勢いを取り戻すことができるか。消費者の財布の紐が固くなりつつある中、ワタミの挑戦から今後も目が離せない。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)