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(写真=PIXTA)

就活に励む学生たちの間で、企業で実際に働いて就業体験を行うインターンシップが広く浸透してきている。一方、企業側からもインターンシップを人材確保の手段として積極的に活用する動きが活発化している。

学生や学校などが抱くインターンシップへの認識と企業側の思惑にはズレもあるが、インターンシップを会社や仕事の魅力をアピールする場として捉え趣向を凝らす、企業側の切実な姿が目立ってきている。

6~7割の学生が企業の様子を知る機会として参加

インターンシップに参加し職場で働く環境を体験する学生が増加傾向にあることが、アンケート調査からも分かる。アイデムが運営する「人と仕事研究所」では、2018年3月の卒業予定で、就職を希望する大学3年生と大学院1年生の男女を対象にインターンシップに関する調査を行った。

それによると2016年夏期インターンシップへの学生の参加は「参加した」が57.2%で前年から3.9ポイント増えた。

学生がインターンシップに参加した会社数は「1社」が36.4%、「2社」は23.4%、「3社以上」は40.2%となり、前年比でみると、2社以上に参加した学生は11.4ポイント増加している。

またインターンシップへの参加目的では、「企業・業界研究のため」が71.1%、「職業体験や社会人の雰囲気を知るため」は65.3%と、6~7割の学生が就職先となる企業の様子を知る機会として利用していることがうかがえる。

高度な専門職を育てるのなら妥当な報酬額か?

企業側でインターンシップに積極的なのはまず、ITC(情報通信技術)業界があげられる。AIやビッグデータを活用した先端事業を展開する上で必須となる、優秀なエンジニアなどを確保するための争奪戦が激化しているのだ。

中でもLINEが打ち出した、"来春から就業型インターンシップは最長2カ月の長期間で実施し、報酬額も80万円(最大)とする"という取り組みは注目が浴びた。

欧米でのインターンシップでは2~3カ月の期間が一般的だが国内では1カ月未満が大半を占めており、異例の長期型だ。同社でのインターンシップでは、期間中はシステム開発などエンジニアの実務に触れるという。

SNSのツイッター上でもこの話題は複数ツイートされていて、"高度な専門職のエンジニアを育てる目的なら80万円も妥当なのでは"という声も見受けられた。

一方、ソフトバンクでは、ICTを駆使した地方創生に取り組む自治体で、学生たちが職員とともに観光振興などに取り組む、ユニークなインターンシップを実施した。携帯電話キャリアとして知られる同社だが、先端技術を用いて社会に幅広く貢献する事業を進めている点をアピールするのもねらいだ。

こうしたICT系企業で行うインターンシップに参加する学生は、もともと専門性の高い分野を学んできたこともあり、そのまま内定につながるケースも多くなってきている。

「学業」か「採用」なのかという議論

インターンシップの中身も多様化している。今年の夏には、野村證券や花王、三井住友銀行など大手企業17社が、国公私立大・高専の1、2年生を対象に1カ月間の長期間インターンシップを実施した。

これは現在主流を占める、主に3年生対象の採用直結の短期型インターンシップとは異なり、企業と教育機関が共同で学びの一環としての取り組みを進めるものだ。企業に対する学生の理解を深め、産学連携で人材を育成していこうという試みだ。

また外資などグローバル企業では、勝ち抜き型のユニークなインターンシッププログラムを企画しているところもある。国内で優勝するとグループの国際大会に出場し、海外の学生たちとナンバー1を目指して競うというもので、グローバルに展開する企業ならではの取り組みといえるだろう。

最初に紹介したアンケート結果にもあるように学生たちのインターンシップに望むニーズは「企業の実際の様子に触れ、企業・業界研究を進め進路の選定に役立てる」のが主な目的である。

それに対し企業の多くでは、インターンシップを新卒採用の定番ツールとして取り入れている実情がある。採用に直結する短期型のインターンシップは、キャリア教育や学生の職業観を育てる点に重点を置く学校教育の観点とは沿わないのである。インターンシップをめぐり「学業」か「採用」なのかは大きな議論となっており、前述の産学連携でのインターンシップは、こうした問題点を解決しようという取り組みの一つといえる。

就業体験でも労働関連法令が適用されるケースがある

企業で働く社会人の身近な話題として、いわゆる”ブラック”と表現される、過酷な就労環境が問題視され、学生においてもブラックバイトの深刻な被害が報告されている。そうした中、社員と同様に働かされていても無給で就業体験をさせられている悪質なインターンシップのケースも、度々表面化している。

例え就業体験の名目であっても、その内容によっては、インターン生が労働基準法上での労働者とみなされ、関係諸法令が適用される場合もある。企業とインターン生の間に、実質的な指揮命令関係があるか、そしてインターン生の作業によって得られる利益や効果が、企業に帰属しているかが、その判断のポイントだ。この点が認められると労働者とみなされ、最低賃金法に基づいた適正な報酬額を支払う義務が企業側に生じる。

就活生のやる気や夢を搾取する悪質なインターンシップを許さないという社会的な土壌を醸成していくことも大切といえるだろう。(ZUU online 編集部)

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