東芝による一連の不祥事は欧米でも広く報じられている。海外でも認知度の高い「TOSHIBA」に一体なにが起こったのか。戦後の日本復興期に重要な役割を果たしただけではなく、海外にも多大な影響を与えた「元祖日本企業」の致命的失脚に、欧米はどのような反応を見せているのだろう。

「問題の早期解決に向けた基本方針の在り方」に疑問

欧米メディアは東芝がどのような経過で経営危機が懸念されるような状況に陥ったかを報じ、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)絡みの原発事業参入が大き過ぎる誤算に終わった点を大々的に取りあげた。

英BBCは「東芝の何が悪いのか」という見出しで、東芝の運命をさらに大きく狂わせることとなった原発事業参入に対し、「どこかで誰かが勝算を見誤り、それが組織全体に悪い形で反映されたようだ」と報じた。不適切行為の疑いによる「決算発表の延期も事態を悪化させている」とし、問題の早期解決に向けた基本方針の在り方にも疑問を投げかけている。

ニューヨーク・タイムズ紙は2006年、東芝がWHを買収した時点で多くのアナリストが「買収額ほどの価値がない」と分析していたと指摘。2008年のリーマンショック後、半導体事業の需要は急減したものの、地球温暖化対策として原子力事業は順調な伸びを記録していた。しかし2011年3月の福島第1原発事故により、原発回帰の流れが暗転した。

ブルームバーグは「東芝はボロボロだがなんとか切り抜ける。しかし今後の成長を期待することはできない」という、シンガポールのBGCパートナーズの日本エクイティ・セールス責任者、アミル・アンヴァーザデー氏のコメントを掲載した。

欧米を騒がす不祥事が相次ぐ日本企業

東芝は2015年7月にも、水増し会計上げ騒ぎで欧米メディアを騒がせた。当時ファイナンシャル・タイムズ紙は、2011年のオリンパス事件(不透明なM&Aで生じた巨額の損失を10年以上明るみにださす、負債を粉飾決算で処理した事件)を引き合いにだし、「日本企業の評判を落とす最大のスキャンダル」と報じた。

また東京商工リサーチのデータに基づき、2015年度から2016年度だけでも58件の会計不正行為が日本企業で発覚したことを指摘。オリンパス事件以降改善が見られるどころか、2倍に悪化している」と批判すると同時に、日本政府によるコーポレート・ガバナンス体制への疑問も唱えた。

その後2016年、2017年にかけて、電通社員の過労死、三菱自動車による2度のリコール隠し・燃費データ改ざんなど日本企業の不祥事が相次いで海外を騒がすことになる。

再び問われる日本のコーポレート・ガバナンス改革

海外メディアが大々的に報じた日本企業のスキャンダルは、過去にも多数存在する。2013年のみずほ銀行暴力団融資事件(2013年)、日興コーディアル粉飾決算事件(2007年)、山一證券の不正会計・破綻事件(1997年)などだ。

今回の東芝の不祥事も含め欧米の受けとめ方で共通しているのは、「日本企業に根づく古い組織体質」「縦割社会」といった組織風土に対しての違和感だ。「強い指導者の欠落」「閉鎖的経営体制」などの表現も聞かれる。

近年の日本企業による一連の不祥事は、「アベノミクス第三の矢」であるコーポレート・ガバナンス改革が正常に機能していない現状を、世界中に知らしめたことになる。

コーポレート・ガバナンス改革に積極的に取り組んできたとされる東芝ですら、根本的な腐敗は改善されていなかった。腐った土台に築いたものは、どれほど頻繁に応急処置を施したところでいずれ崩れ去る。

しかしコーポレート・ガバナンスの失敗例は、日本に限定されているわけではない。最も記憶に新しいところでは、5000人以上の懲戒解雇者をだした米ウェルズ・ファーゴの不正口座開設事件など、大手企業による「不透明な経営」のツケが社会の明るみにでた例は山ほどある。

BBCはこうした大企業を「ゾンビ企業」と形容。規制を含む模範的ビジネスの基礎をみっちり学んだ若手が成功を目指したところで、「政府や大手企業には相手にされない」現状を指摘。「最終的には腐敗した大手企業だけが得をする」「規制を真面目に守っているだけでは成功できない」歪んだ事業環境が、尽きることのない不祥事の根本的な原因であるとしている。

そして不祥事が明るみにでたが最後「トップが頭を深々と下げて謝罪する」のも、日本企業文化のひとつである。日本企業の不祥事が報じられるたびに、社長や幹部が深々と頭をさげて謝罪している写真が紙面を飾る。「頭を下げるだけでは何も解決しない」という批判も、最早定番化した感が強い。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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