ソフトバンク社債
(写真=GongTo/Shutterstock.com)

高利率で個人投資家からの人気が高い「ソフトバンク社債」は、今回も募集開始すぐに完売となったようだ。

低金利時代において2%を超える円建ての社債は魅力的に映るかもしれないが、リスクを正しく理解出来ているだろうか。

即完売の「福岡ソフトバンクホークスボンド」

ソフトバンクグループが、3月3日から募集開始した第51回無担保社債は、愛称「福岡ソフトバンクホークスボンド」だ。発行総額は4000億円、利率は年2回配当で年率2.03%(税前)。償還は7年後の2024年3月15日となっている。

仮に1000万円を投資すれば、年間20万3000円の利子が付き、7年で利子総額は142万1000円となり、7年後には1000万円の元本が戻ってくる(利子に対する税金は考慮せず)。元本は償還まで引き出し不可だが、3月と9月の年2回の利率はいつでも引き出し可能。資産家にとっては、為替リスクもないこの債券は、年に2回ボーナスをもらえる高利回りの円定期預金的な感覚で投資できるため人気があるのだろう。

募集は3月3日から15日までだが、SBI証券のHPを見る限りすでに完売だ。知名度が高く利率も比較的高いため、過去のシリーズでもほとんどが募集開始で瞬間蒸発するほどの人気となっている。

過去の「福岡ソフトバンクホークスボンド」で発行残高があるものは、第39回1000億円、第43回4000億円、第45回3000億円、第46回4000億円、第47回1000億円、第48回3700億円があり、今回の4000億円を入れると2兆円を超す残高があり、個人向けに人気が高い。

今年は3月10日に第41回の利率1.47%の「福岡ソフトバンクホークスボンド」3000億円が償還された。おそらく償還された資金の大半は、利率が上がっていることもあって、今回の第51回「福岡ソフトバンクホークスボンド」に乗り換えたのではないかと推測できる。

メガバンクの預金金利が0.01%、国債の流通利回りがマイナス金利の時代に、2%を超える金利は魅力的に映る。さらに、急な資金需要が出たときでも、社債を担保に証券会社からすぐに借り入れることが可能で、使い勝手もよさそうだ。

「高利率=高リスク」 理解できていますか?

なぜソフトバンク債は、これほど高い利率なのだろう。金融の世界では、ハイリターン商品はハイリスクなのがあたりまえだ。

ソフトバンクは、孫社長のもと拡大路線をとってきた。国内での拡大だけでなく、2013年には米携帯3位のスプリント社を約1兆8000億円で買収、16年には英半導体設計大手ARM社を3.3兆円で買収するなど海外でも攻めの経営をとっている。さらに、今年は10兆円のソフトバンク・ビジョン・ファンドを立ち上げることを表明している。

攻めの経営の結果、ソフトバンクグループの有利子負債は、16年9月末で14兆2998億円となっており、16年3月末比で2兆3774億円増えている。いわばソフトバンクは、「日本有数の借金会社」だ。

ソフトバンクの16年3月期の最終利益は4742億円。過去最高益だが、なんと同社の有利子負債は過去最高の最終利益の30倍に達する。個人で言えば、年収470万円程度の人が1億4300万円の借金をもっているようなイメージだ。これが個人であれば気が気ではない状態だろう。

債券投資では、発行体が破綻して投資資金が償還されないことが一番のリスクだ。その破綻リスクを見るために投資格付がある。

格付けは、スタンダード&プアーズ(S&P)では、一番破綻懸念が少ないものをトリプルA(AAA)としており、国債では現時点ではドイツ国債などがAAAだ。米国債はAA+、日本国債はA+である。

BBBまでの格付けの債券を投資適格債として比較的リスクの低い債券としている。それ以下のBB以下の格付けを投資非適格債、もしくはハイイールド債、ジャンクボンドなどと言い、投資適格債とは区別している。

ソフトバンクの信用格付けは、日本の格付け機関である日本格付研究所(JCR)ではA-ながら、世界の格付け機関であるS&PではBB+、ムーディーズではBa1となっており、世界的には投資非適格債としてみなされている。

格付けBB+は、国債の格付けで言うと、インドネシアやロシア、ポルトガルに相当する。ちなみに、インドネシアの5年から7年の国債の利回りは7%台だ。 社債は通常、国債よりもさらに利回りは高くなるため、ソフトバンクが世界の金融市場で2%の金利で資金調達することは難しいだろう。

社債は、銀行預金のように銀行が倒産しても預金保護制度のペイオフの対象にはならず、発行体が倒産しても保護されない。

孫社長ほどのカリスマ経営者がいなくなったときの経営リスクは大きい。有利子負債が大きいということは、何かで金利が急騰した場合、ソフトバンクの返済負担が大きく増えるということだ。JALやシャープといったかつての優良会社が破綻し、東芝が苦境に陥っている。大企業といえども7年後には何が起こるかはわからない。

個人向けの社債で償還までの持ちきりを前提にしているため、途中解約の流動性のリスクもある。何らかの理由で償還前に途中解約をしなければならない場合は、理論値より低い値段で売らなければならない可能性があるだろう。可能性は低いもののソフトバンク債にはリスクもあることを理解した上で選択いただきたい。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

※お詫びと訂正
国内企業の有利子負債額に関して一部誤りがございました。「日本一の借金会社」から「日本有数の借金会社」へと訂正いたしました。関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

【編集部のオススメ記事】
最前線で活躍する大人のスキンケアの心得とは(PR)
ZUU online8月記事ランキング 丸井は百貨店ではない、300万円超えのスーパーマリオ……
デキるビジネスパーソンは脂を身体に乗せず、仕事に乗せる。(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
NISA口座おすすめランキング、銀行と証券どっちがおすすめ?(PR)